核心解説
この問題は、酸塩基平衡障害における生体の代償機構を問うています。アシドーシス(Acidosis)とは、体内の水素イオン (H⁺) 濃度が上昇し、血液のpHが
7.35未満に低下した状態です。生体はこのpH低下を是正するために、肺と腎臓という2つの主要な臓器を用いて代償反応を起こします。
正解の根拠 (Answer Rationale)
アシドーシスが発生すると、
呼吸中枢が刺激され、呼吸数と一回換気量が増加します。これを
クスマウル呼吸 (Kussmaul Respiration) と呼び、深く速い呼吸によって二酸化炭素 (CO₂) を過剰に肺から排出します。CO₂は血中で炭酸 (H₂CO₃) に変わるため、CO₂を減らすことで血中のH⁺濃度を低下させ、pHを上昇させようとします。これは数分で始まる即時性の代償反応です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番の「腎臓からの水素イオン排泄減少」は逆です。アシドーシス時、腎臓は
水素イオン排泄を増加させ、尿を酸性に傾けます。③番の「尿中の重炭酸イオン排泄増加」も逆で、腎臓はH⁺と引き換えに
重炭酸イオン (HCO₃⁻) を再吸収し、排泄を減少させます。腎臓の代償は数時間~数日かかる遅発性ですが、強力な調整機構です。④番の「心拍数の減少」や⑤番の「呼吸数の減少」はアシドーシス時の代償反応ではなく、むしろ重度のアシドーシスによる心機能低下や、アルカローシス時に見られる反応です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
代償反応は、呼吸性と代謝性で方向性を整理しましょう。
| 障害の種類 | 一次的な変化 | 代償反応 |
|---|
| 代謝性アシドーシス | HCO₃⁻ 低下 | 呼吸数の増加(CO₂排出促進) |
| 代謝性アルカローシス | HCO₃⁻ 上昇 | 呼吸数の減少(CO₂貯留) |
| 呼吸性アシドーシス | PaCO₂ 上昇 | 腎臓でのH⁺排泄増加 & HCO₃⁻再吸収促進 |
| 呼吸性アルカローシス | PaCO₂ 低下 | 腎臓でのH⁺排泄減少 & HCO₃⁻再吸収抑制 |
概念整理: アシドーシスに対する代償の基本原則は「肺はCO₂を、腎臓はH⁺とHCO₃⁻を調整する」。pH低下 → 呼吸促進(CO₂排出)、腎H⁺排泄促進・HCO₃⁻再吸収促進。
一目で比較!:
代償 (Compensation) vs
是正 (Correction)。代償は生体がpHを正常範囲に戻そうとする反応(結果的にpHは正常化しないこともある)。是正は原因治療によりpHが完全に正常化すること。
看護過程ポイント:
アセスメント:血液ガス分析 (ABG) でpH、PaCO₂、HCO₃⁻を確認し、一次障害と代償の状態を評価。
観察:呼吸パターン(深さ、速さ)、意識レベル、血圧、不整脈。
介入:原因となる疾患(糖尿病性ケトアシドーシス、慢性閉塞性肺疾患など)への看護を優先。
暗記のコツ: 「アシドーシス = 酸っぱい = 肺が「酸(CO₂)」を吐き出そうと頑張る! 呼吸は「速く・深く」。」と覚えましょう。
国試頻出ポイント: 「アシドーシス時の代償反応は?」という知識問題に加え、事例問題(糖尿病患者のクスマウル呼吸、COPD患者の呼吸パターン変化)で頻出です。
出題パターン注意!: 単純な「呼吸数増加」の選択だけでなく、「深く速い呼吸」というクスマウル呼吸の特徴や、「呼吸性」「代謝性」の組み合わせで混乱させてくる問題に注意。