核心解説
この問題は、
細胞外液量 (Extracellular Fluid Volume) の異常とそれに伴う身体所見の理解を問うています。体液量の評価は、脱水(細胞外液量減少)と溢水(細胞外液量増加)の鑑別が基本であり、バイタルサインや身体所見から判断する臨床推論能力が求められます。
1.
核心概念の分析 (Key Concept):
細胞外液量 (ECF Volume) は、血管内の
血漿 (Plasma) と細胞と血管の間にある
間質液 (Interstitial Fluid) から構成されます。細胞外液量が減少する状態を
脱水 (Dehydration / Volume Depletion) といい、
低張性脱水、
等張性脱水、
高張性脱水 の3つに分類されます。本問では、いずれの脱水にも共通する身体所見を問われています。細胞外液が減少すると、組織の水分量が低下し、皮膚の弾力性やツルゴール(皮膚をつまんだ時の弾力と戻り速度)が低下します。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は
皮膚のツルゴール低下 (Decreased Skin Turgor) です。
最重要! 皮膚のツルゴールとは、皮膚の弾力性を評価する指標で、脱水時には細胞外液、特に間質液が減少するため、皮膚をつまんで離した時に元に戻る速度が遅くなり、しわが残ります。これは
脱水の初期徴候 として非常に重要です。特に高齢者では、正常でも皮膚の弾力性が低下しているため、
高齢者の脱水評価は慎重に行う必要があります。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ②番の
体重の増加 (Weight Gain): 細胞外液量が減少した状態(脱水)では、体重は減少します。体重増加は、むしろ細胞外液量が増加した状態(溢水)を示す所見です。
- ③番の
下腿の浮腫 (Lower Leg Edema): 浮腫は、間質液量が異常に増加した状態であり、細胞外液量の増加(溢水)を示します。心不全、腎不全、肝硬変などで認められます。
- ④番の
頸静脈の怒張 (Jugular Vein Distention): 頸静脈は右心房の圧を反映します。右心不全や体液過剰(細胞外液量増加)により上大静脈圧が上昇すると、頸静脈が怒張します。
- ⑤番の
肺水腫 (Pulmonary Edema): 肺水腫は、肺の間質や肺胞内に異常な水分が貯留した状態で、左心不全や体液過剰(細胞外液量増加)により引き起こされます。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
| 評価項目 | 細胞外液量減少(脱水) | 細胞外液量増加(溢水) |
|---|
| 皮膚ツルゴール | 低下 | 正常~亢進 |
| 体重 | 減少 | 増加 |
| 浮腫 | なし | あり(下腿、眼瞼など) |
| 頸静脈 | 平坦(虚脱) | 怒張 |
| 肺 | 清明 | 肺水腫(ラ音) |
| 口腔粘膜 | 乾燥 | 正常~湿潤 |
概念整理: 細胞外液量減少(脱水)の病態生理の核心は
Na+ と水の喪失 です。これにより血管内容量が減少し、組織への灌流が低下します。身体所見として、皮膚ツルゴール低下、口腔粘膜乾燥、起立性低血圧、尿量減少などが出現します。
一目で比較!:
混同注意! 脱水(細胞外液量減少) vs
溢水(細胞外液量増加) の身体所見は真逆です。両者の特徴を対比して覚えましょう。特に
頸静脈 の所見(平坦 vs 怒張)は鑑別の決め手となります。
看護過程ポイント:
-
アセスメント: バイタルサイン(特に
起立性低血圧 の有無)、体重測定(毎日同時刻・同条件)、皮膚ツルゴール、口腔内・舌の乾燥、尿量・尿比重、頸静脈の観察。
-
看護診断: 「
体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」または「
体液量過剰 (Excess Fluid Volume)」のリスク。
-
計画・介入: 脱水時は経口または静脈内輸液による補水。溢水時は水分・ナトリウム制限、利尿薬投与。
暗記のコツ: 「ツルゴール(turgor)」は「膨らみ・張り」という意味です。皮膚の「張り」がなくなると「ツルゴール低下」。体重は「水の量」の鏡。水が減れば体重も減る。水が増えれば体重も増える。
国試頻出ポイント: 脱水と溢水の身体所見の鑑別は毎年必出!特に
皮膚ツルゴール低下 と
体重減少 は脱水の代表的な所見です。事例問題では、高齢者の発熱・下痢・嘔吐の後にこれらの所見が出現した場合、脱水を疑います。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(本例)に加え、「70代男性、肺炎で入院中、発熱と食欲不振が続いている。看護師がアセスメントすべき脱水の所見として適切なのはどれか?」のような状況設定問題でも頻出です。この場合は、正解に加えて「バイタルサイン(発熱)と食事摂取量低下の情報から、脱水リスクが高い」という臨床推論が必要です。