核心解説
この問題は、
体液調節障害 (Fluid and Electrolyte Imbalance) の中核概念である「浸透圧 (Osmotic Pressure)」による水分移動の原理を問うています。
浸透圧とは、半透膜を介して溶質濃度の低い側から高い側へ水を引き寄せる力です。細胞膜はこの半透膜として機能し、細胞内外の浸透圧が異なると、平衡を保つために水分が移動します。
1.
核心概念の分析 (Key Concept):
浸透圧 (Osmolality) は、体液の溶質(主にナトリウム (Na+))濃度によって決まります。細胞外液の浸透圧が上昇する状態は「高張性脱水 (Hypertonic Dehydration)」や「高ナトリウム血症 (Hypernatremia)」などが代表的です。この時、細胞内液の浸透圧は相対的に低いため、細胞内から細胞外へ水分が引き出されます。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は
⑤ 細胞内から細胞外へ水分が移動する です。細胞外液の浸透圧が上昇すると、浸透圧の高い側(細胞外)へ水を移動させて平衡を保とうとするため、細胞内から細胞外へ水分が移動します。これにより
細胞内脱水 (Intracellular Dehydration) が生じ、細胞は縮小します。脳細胞が脱水されると、
意識障害や痙攣などの症状が現れる危険な状態です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
-
混同注意! ①「細胞内外で水分移動は生じない」は誤り。浸透圧差があれば必ず水分移動が生じます。
- ②「細胞内から間質へ水分が移動する」は部分的に正しいですが、間質(Interstitium)は細胞外液の一部です。より正確には「細胞外へ」です。本問では「細胞外」の定義を問うており、⑤の方が完全です。
- ③「細胞外から細胞内へ水分が移動する」は逆の現象です。これは細胞外液が低張(低ナトリウム血症)の場合に生じます。
- ④「血管内から細胞内へ水分が移動する」も逆の現象で、血管内は細胞外液の一部です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
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混同注意! 低張性脱水 (Hypotonic Dehydration):細胞外液の浸透圧が低下すると、水が細胞内へ移動し、細胞は膨張します(脳浮腫のリスク)。
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等張性脱水 (Isotonic Dehydration):細胞外液のナトリウムと水分が等しく失われるため、浸透圧は変化せず、細胞内外で水分移動は生じません。主に細胞外液量が減少します。
概念整理:
| 状態 | 細胞外液浸透圧 | 水分移動方向 | 細胞の変化 |
|---|
| 高張性脱水 (高Na血症) | 上昇 | 細胞内→細胞外 | 縮小 (Crenation) |
| 低張性脱水 (低Na血症) | 低下 | 細胞外→細胞内 | 膨張 (Swelling) |
| 等張性脱水 | 正常 | 移動なし | 変化なし |
一目で比較!:
混同注意! 「高張 → 細胞外に水を引き寄せる → 細胞内から細胞外へ」と覚えましょう。語呂合わせ:「高張の『高』は外に『高』く引き上げる」とイメージすると記憶に残りやすいです。
看護過程ポイント:
アセスメント:血清ナトリウム値(基準値:
136-145 mEq/L)と尿量、口渇感の有無、皮膚ツルゴールを評価。
看護診断:「体液量不足(Deficient Fluid Volume)」または「口渇(Risk for Impaired Oral Mucous Membrane)」が挙がります。
計画・介入:経口摂取が可能ならば、水分摂取を促す(一度に多量ではなく、少量頻回)。
高ナトリウム血症が重度の場合は、急速な補正は脳浮腫を誘発するため、5%ブドウ糖液などで緩徐に補正する必要があります。
暗記のコツ: 「浸透圧の高い方へ水は行く」と暗記しましょう。細胞外が高張なら、水は外へ。細胞内が高張なら、水は内へ。この原理は輸液療法(例:高張食塩水 vs 低張液の選択)の理解にも直結します。
国試頻出ポイント: 体液移動の方向性は、脱水の種類(高張性・等張性・低張性)の分類とセットで頻出です。特に「高張性脱水でみられる細胞の変化」や「低張性脱水でリスクとなる症状(脳浮腫)」が問われやすいです。事例問題では「血清Na値が150mEq/Lの場合の水分移動」など、数値を絡めた出題も多いので注意しましょう。
出題パターン注意!: 「高齢の寝たきり患者が、経管栄養で高濃度の栄養剤を投与された後に血清Na値が上昇した。この時に細胞に生じる変化は?」という事例形式で出題されることもあります。脱水の原因(高Na血症の原因)と、それに伴う水分移動を統合して考える力が求められます。