高齢者の脱水症で注意すべき合併症として最も適切なのはどれか。 | MyMerci
内部環境調節機能の障害
問題

高齢者の脱水症で注意すべき合併症として最も適切なのはどれか。

解説
高齢者の脱水症では、血液が濃縮されるため血液粘稠度が上昇し、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症のリスクが高まります。特に高齢者は動脈硬化が進行していることが多く、脱水による血流低下が脳梗塞の誘因となるため注意が必要です。

詳細解説

核心解説 この問題は、高齢者の脱水症 (Dehydration in the Elderly) における合併症 (Complication) の優先順位を問うものです。高齢者は体内水分量が若年者より少なく、腎機能の低下や口渇感の鈍化により脱水を起こしやすい状態にあります。脱水が進行すると、循環血液量が減少し血液が濃縮されます(血液濃縮)。これにより血液粘稠度が上昇し、血栓が形成されやすくなります。特に脳血管や冠動脈など、すでに動脈硬化が進行している高齢者では、この血流低下が最重要!脳梗塞 (Cerebral Infarction) や心筋梗塞などの虚血性疾患の重大な誘因となります。 正解の根拠 (Answer Rationale): 選択肢②の脳梗塞 (Cerebral Infarction) が最も適切です。脱水による血液濃縮(ヘマトクリット上昇)と血圧低下が、脳血流を減少させ、血栓形成を促進します。高齢者は脱水症の初期症状(口渇、尿量減少)に気づきにくく、発見が遅れると重篤な脳梗塞を発症するリスクが格段に高まります。 誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ① 混同注意! 緑内障 (Glaucoma) は眼圧上昇が主因であり、脱水との直接的な因果関係はありません。
- ③ 混同注意! 高血圧 (Hypertension) はむしろ脱水時には循環血液量減少により血圧が低下傾向となるため、合併症として適切ではありません。
- ④ 混同注意! 痛風発作 (Gout Attack) は脱水により尿酸値が上昇し誘発される可能性はありますが、生命に関わる緊急性や頻度を考慮すると、脳梗塞が優先されます。
- ⑤ 混同注意! 甲状腺機能亢進症 (Hyperthyroidism) は代謝亢進による発汗で脱水を来たすことはありますが、脱水症の直接的な合併症ではありません。 関連概念の整理 (Related Concepts):
脱水症の病態は大きく3つに分類されます。① 等張性脱水 (Isotonic Dehydration)(最も頻度が高い)、② 高張性脱水 (Hypertonic Dehydration)(高齢者や糖尿病患者に多い)、③ 低張性脱水 (Hypotonic Dehydration)(利尿薬使用時など)。高齢者では腎の濃縮力低下により高張性脱水を起こしやすく、細胞内脱水が進行し、意識障害や脳梗塞リスクが特に高まります。併せて、深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis)急性腎障害 (Acute Kidney Injury) も注意すべき合併症です。 概念整理: 高齢者脱水 → 循環血液量減少 → 血液濃縮(ヘマトクリット↑)→ 血液粘稠度↑ → 血栓形成促進 → 最重要!脳梗塞・心筋梗塞のリスク上昇。高齢者の脱水予防と早期発見が、致死的な血栓症予防に直結します。 一目で比較!:
状態血液粘稠度脳梗塞リスクその他合併症
脱水症上昇深部静脈血栓症、急性腎障害
溢水(水分過剰)低下肺水腫、心不全増悪
看護過程ポイント:
アセスメント: バイタルサイン(血圧低下、脈拍増加、体温上昇)、皮膚ツルゴール低下、口唇・口腔粘膜の乾燥、尿量減少(30ml/hr未満)、意識レベルの変化(傾眠、せん妄)。
看護診断: 「体液量不足リスク (Risk for Deficient Fluid Volume)」または「口腔粘膜損傷のリスク」
看護介入: 経口摂取可能ならこまめな水分補給(1日1.5Lを目安)、経口不能なら医師指示に基づく輸液療法 (Fluid Therapy)(等張性輸液が第一選択)、体重測定、尿量・バイタルサインのモニタリング。脳梗塞の前兆症状(片麻痺、構音障害、意識障害)の観察も必須。 暗記のコツ: 「脱水=血液ドロドロ=脳梗塞(のど)!」と覚えましょう。高齢者の脱水は「ドロドロ血液」が脳の血管を詰まらせるイメージです。 国試頻出ポイント: 高齢者の脱水と脳梗塞の関連は毎年のように出題されます。特に「口渇感が鈍い」「夜間の頻尿を避けるために水分摂取を控える」といった高齢者の特徴と、夏場の熱中症との関連、または薬剤(利尿薬、下剤)の影響と組み合わせた事例問題が頻出です。 出題パターン注意!: 単純な「脱水の合併症は?」から、「高齢者で下痢が続き、意識がもうろうとしてきた。脳梗塞のリスクを考慮した看護は?」のような状況設定問題(事例問題)に発展します。検査値(ヘマトクリット、血清ナトリウム)とともに考える問題もよく出ます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 85歳女性、要介護2で施設入所中。夏場に発熱(38.5℃)と食欲低下が続き、数日間水分摂取が不十分でした。夕方の巡回時、呼びかけに反応が鈍く、血圧は 90/60 mmHg、脈拍 102回/分、口腔粘膜は著明に乾燥し、皮膚ツルゴールも低下しています。バイタルサイン測定中に、突然、左半身の麻痺と構音障害が出現しました。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察: バイタルサイン(血圧低下、頻脈)、意識レベル(JCSで評価)、神経症状(片麻痺、顔面神経麻痺、言語障害)の有無を迅速に確認。SpO2を測定し、低酸素の有無を確認。
2. アセスメント: 脱水による血液濃縮と血圧低下が、脳血流を減少させ、血栓を形成し脳梗塞を発症した可能性が高い。
3. 報告(SBAR): 「S:85歳女性、脱水症で経過観察中。左半身麻痺と構音障害が出現。B:バイタルサインは血圧90/60、脈拍102。意識はJCS II-20。A:脱水による脳梗塞の発症を疑います。R:緊急で医師の診察と、可能であれば頭部CT、輸液の指示をお願いします。」
4. 介入: 直ちに安静を指示し、医師の到着まで酸素投与(指示があれば)、静脈路の確保準備。誤嚥を防ぐため、経口摂取は中止。ベッド上安静を厳守。
5. 評価: 神経症状の進行の有無、バイタルサインの変動を継続モニタリング。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
禁忌: 意識障害がある場合の無理な経口水分補給は誤嚥性肺炎を引き起こすため絶対に避ける。
・高齢者の脱水は「夏場の熱中症」だけでなく、冬場の「ヒートショック」や「肺炎による発熱」でも起こり得るため、季節を問わず注意が必要。
・施設や在宅では、水分摂取量・尿量・体重の記録を徹底し、1日尿量800ml以上 を維持するよう支援する。
・転倒・転落予防: 脱水によるふらつき・意識障害で転倒リスクが高いため、ベッド柵の使用や移動時の介助を徹底。 看護プロトコル:
観察項目: バイタルサイン(血圧、脈拍、体温、呼吸)、意識レベル、神経症状、尿量(30ml/hr未満で要注意)、皮膚ツルゴール、口唇・口腔粘膜の乾燥、体重変化。
報告基準(SBAR): 意識レベルの低下、新たな神経症状の出現、血圧の急激な低下(収縮期血圧 90mmHg未満)、尿量の著明な減少。
記録のポイント: 水分摂取量と尿量のバランス(I/Oバランス)、バイタルサインの経時的変化、観察した神経症状の詳細と出現時間、医師への報告内容と指示内容。 先輩看護師の一言: 「高齢者、特に施設や在宅で生活している方の脱水は、『ちょっと元気がないな』という小さなサインから始まります。『いつもと違う』に気づけるかどうかが、脳梗塞のような重大な合併症を防ぐ第一歩です。国試の知識はもちろん大事ですが、『この患者さんに何が起きているのか』を病態から考え、次の一手を迷わず打てるように、日々の観察力を磨いてくださいね!」

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