循環血液量減少時の生体反応として誤っているのはどれか。 | MyMerci
内部環境調節機能の障害
問題

循環血液量減少時の生体反応として誤っているのはどれか。

解説
循環血液量減少時には、心房への静脈還流が減少し心房が虚脱するため、ANPの分泌は抑制されます。ANPは循環血液量増加時に分泌が亢進し、ナトリウムと水の排泄を促進して体液量を減少させる方向に働きます。

詳細解説

核心解説 この問題は、循環血液量減少(Hypovolemia) 時に生体が起こす代償性反応について理解しているかを問うています。循環血液量が減少すると、血圧を維持し臓器への血流を確保するために、様々な神経体液性因子が活性化されます。誤っている選択肢は、循環血液量減少時に分泌が抑制されるホルモンを選ぶ必要があります。
1. 正解の根拠(Answer Rationale): 最重要! 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP: Atrial Natriuretic Peptide)は、循環血液量増加 時に心房壁が伸展されることで分泌が亢進し、ナトリウムと水の排泄を促進して体液量を減少させる方向に働くホルモンです。反対に、循環血液量減少時には心房への静脈還流量が減少し心房壁の伸展が低下するため、ANPの分泌は抑制されます。 よって、「ANP分泌の亢進」は誤りです。 2. 誤答の分析(Distractor Analysis):
混同注意! 循環血液量減少時には、以下の代償反応が生じます。
① 交感神経活動の亢進:血圧低下を感知し、心拍数増加、心収縮力増強、末梢血管収縮を引き起こします。
② アルドステロン分泌の亢進:腎臓の傍糸球体装置から分泌されるレニンにより活性化されるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の最終産物です。アルドステロンは尿細管でのナトリウムと水の再吸収を促進し、循環血液量を増加させます。
③ バソプレシン(ADH: Antidiuretic Hormone)分泌の亢進:視床下部で産生され、腎臓の集合管での水の再吸収を促進し、体液を保持します。循環血液量減少は強力なADH分泌刺激となります。
④ レニン分泌の亢進:腎血流量減少を感知し、レニンを分泌してRAASを活性化します。
これらの①~④は全て循環血液量減少に対する代償反応であり、正しい記述です。⑤のみが誤りとなります。 3. 関連概念の整理(Related Concepts): ANPとBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)はどちらも心不全の診断マーカーとして重要ですが、ANPは心房から、BNPは心室から主に分泌されます。ANPは循環血液量増加に反応し、BNPは心室壁の伸展・圧負荷に反応します。循環血液量減少時には、RAASが亢進し、ANP/BNPは抑制されるという、体液量調節における拮抗的な関係 を理解することが重要です。
概念整理: 循環血液量減少(Hypovolemia)時には、血圧維持と体液保持を目的とした代償機構が作動します。この代償機構の主軸は、交感神経系(SNS)レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)、そして バソプレシン(ADH) の亢進です。これらに対し、体液量減少を促進するANPやBNPは抑制されます。
一目で比較!:
項目 循環血液量減少時 循環血液量増加時(例:心不全)
交感神経 亢進 亢進(代償性)
レニン 亢進 亢進(心不全時)
アルドステロン 亢進 亢進
バソプレシン 亢進 亢進
ANP / BNP 抑制 亢進

看護過程ポイント: 最重要! アセスメント(Assessment)の段階では、循環血液量減少のサイン(皮膚の乾燥、粘膜の乾燥、尿量減少、血圧低下、頻脈、頸静脈の虚脱、体重減少) と、これらの代償反応が過剰に働いた際に生じる症状(例えば、RAAS亢進による高血圧や低カリウム血症、ADH亢進による希釈性低ナトリウム血症など)を観察する必要があります。看護診断(Nursing Diagnosis)としては「体液量減少(Deficient Fluid Volume)」が優先されます。
暗記のコツ: 「ANPは『減らすホルモン』(Naと水を排泄して体液量を減らす)」と覚えましょう。循環血液量が減っているときには、体液を減らすホルモンは必要ないので分泌が抑制されます。反対に、RAASやADHは「増やすホルモン(体液を保持する)」なので、循環血液量減少時に亢進します。
国試頻出ポイント: この問題は、体液量調節のメカニズムを総合的に問う頻出テーマです。特に、「混同注意! 循環血液量減少時 vs 循環血液量増加時(心不全など)」のホルモン分泌の違いは、繰り返し出題されています。また、ANPとBNPの違い、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の各ホルモンの作用も合わせて押さえておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題としてだけでなく、「出血性ショックの患者のバイタルサインと検査値から、現在生じている生体反応をアセスメントさせる」といった状況設定問題に発展することが多いです。例えば、頻脈、血圧低下、尿量減少に加えて、血清Na値やK値の変動、ANP値の低下などを読み取らせる問題が考えられます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド
臨床シナリオ(Clinical Scenario): あなたは外科病棟の看護師です。術後2日目の70歳男性患者(胃がんの胃切除術後)の担当になりました。夜間の巡回時、患者から「気分が悪い」と訴えがあります。観察すると、ドレーン排液が突然200ml/hに増加し、鮮血が混じっています。バイタルサインは血圧80/50mmHg、心拍数110bpm、呼吸数24回/分です。顔色は蒼白で、皮膚は冷たく湿潤しています。
看護介入と判断戦略(Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! この状況は 出血性ショック(Hemorrhagic Shock) が疑われます。看護師としての対応は以下の通りです。
1. 観察とアセスメント: バイタルサインの異常、ドレーン排液量の増加と性状(鮮血)、皮膚所見(冷汗、蒼白)、意識レベル(JCS)の確認。これらは全て循環血液量減少の代償反応(交感神経亢進による頻脈、RAAS/ADH亢進による尿量減少)が働いているサインです。この時、ANPは抑制されているはずです。 2. 報告と指示受け(SBAR): 直ちに医師へ SBAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation) で報告します。
- S(状況): 「70歳男性、胃切除後2日目。ドレーン排液が突然200ml/hに増加、鮮血。血圧低下と頻脈あり。」
- B(背景): 「胃切除術後2日目、既往歴に特記事項なし。」
- A(アセスメント): 「術後出血による循環血液量減少性ショックを疑います。」
- R(提案): 「輸液の増量、緊急採血(血算、凝固系)、輸血の準備、緊急手術の可能性についてご指示ください。」
3. 介入: 医師の指示に基づき、大口径の静脈路確保、乳酸リンゲル液などの急速輸液、酸素投与 を開始します。必要に応じて輸血の準備を行います。患者のベッドはトレンデレンブルグ体位(頭部低減位)とし、脳血流を確保します。 4. 評価: 介入後のバイタルサインの推移、尿量(0.5ml/kg/h以上が目標)、意識レベルの改善をモニタリングします。
患者安全・注意事項(Patient Safety & Precautions): 急変時の対応 として、二次救急蘇生(ACLS) のアルゴリズムに従い、ショックの原因を特定し、輸液・輸血・薬剤(昇圧薬など)の準備を迅速に行います。また、輸血の際は患者確認(本人確認、IDバンド、輸血バッグの照合)を徹底し、副作用(アレルギー反応、溶血反応)の観察を怠らないでください。
看護プロトコル: 術後出血が疑われる場合の観察項目は、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、SpO2)、ドレーン排液量と性状、創部の状態、腹部症状(膨満、圧痛)、尿量、意識レベル、皮膚の色調と温湿度です。報告の際は、具体的な数値を伝え、「いつもと違う」という感覚も必ず共有してください。
先輩看護師の一言: 「患者さんの『なんとなく変』という訴えやバイタルサインのわずかな変化は、循環血液量減少の最初のサインかもしれません。『バイタルサインが下がったら報告』ではなく、『バイタルサインが下がる前に、その前兆を捉える』のがプロの看護師です!特に術後患者では、ドレーン排液の色と量の変化を見逃さないでくださいね。この問題のように、体液量を増やす代償機構(RAAS、ADH)と減らす機構(ANP)のバランスを理解することで、患者さんの状態をより深くアセスメントできるようになります。」

重要概念

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