核心解説
この問題は、
等張性脱水 (Isotonic Dehydration) の原因を問うものです。脱水の分類は、喪失した水分と電解質(特にナトリウム)のバランスによって決まります。等張性脱水は、
水分とナトリウムがほぼ等しい割合で喪失する病態であり、細胞外液の浸透圧は正常範囲に保たれます。最も代表的な原因は、消化管からの等張液の喪失です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②番の
下痢 (Diarrhea) が正解です。下痢では、腸液(水分と電解質の組成が血漿に近い等張液)が大量に体外へ排出されます。そのため、体内の水分とナトリウムがバランスよく失われ、等張性脱水をきたします。これは、病態生理の基本として確実に押さえておくべきポイントです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 脱水の分類は、原因によって変化します。
- ①番
尿崩症 (Diabetes Insipidus) は、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌低下または作用不全により、水分のみが大量に喪失されるため、
高張性脱水 (Hypertonic Dehydration) の原因となります。
- ③番
糖尿病性ケトアシドーシス (Diabetic Ketoacidosis, DKA) は、高血糖による浸透圧利尿で水分がナトリウムよりも多く失われるため、
高張性脱水 (Hypertonic Dehydration) を呈します。
- ④番
発熱による不感蒸泄の増加 は、純粋な水分(電解質を含まない)の喪失であるため、
高張性脱水 (Hypertonic Dehydration) の原因となります。
- ⑤番
大量の発汗 (Profuse Sweating) は、汗は低張液であるため、水分がナトリウムよりやや多く失われる結果、
高張性脱水 (Hypertonic Dehydration) に近い病態を示すことが多いです。しかし、発汗のみで高度な脱水が生じることは稀であり、通常は経口補水で改善します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
脱水の3つの分類(等張性・高張性・低張性)は、血清ナトリウム濃度と浸透圧で鑑別します。
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等張性脱水: 血清Na 135~145mEq/L、浸透圧 正常
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高張性脱水: 血清Na > 145mEq/L、浸透圧 上昇
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低張性脱水: 血清Na < 135mEq/L、浸透圧 低下
等張性脱水の治療は、乳酸リンゲル液などの
細胞外液補充液 (Extracellular Fluid Replacement Solution) が第一選択となります。
概念整理
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等張性脱水:水分とナトリウムが等しく喪失 → 血清Na正常、細胞外液量減少
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高張性脱水:水分喪失が主体(発熱、尿崩症、DKA、発汗) → 血清Na上昇
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低張性脱水:ナトリウム喪失が主体(利尿薬過剰使用、副腎不全) → 血清Na低下
一目で比較!
| 脱水の種類 | 原因例 | 血清Na値 | 主な補液 |
| 等張性脱水 | 下痢、嘔吐、瘻孔 | 正常 | 細胞外液補充液(乳酸リンゲル液) |
| 高張性脱水 | 尿崩症、DKA、発熱 | 高値 | 低張液(5%ブドウ糖液、0.45%生理食塩液) |
| 低張性脱水 | 利尿薬過剰、副腎不全 | 低値 | 高張食塩液(3%食塩水) |
看護過程ポイント
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アセスメント:体重減少、皮膚ツルゴール低下、粘膜乾燥、尿量減少、バイタルサイン(頻脈、血圧低下)を観察。血清Na値と浸透圧を確認し、脱水の種類を特定する。
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看護診断:「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」が優先される。
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計画・実施:医師の指示に基づき、適切な輸液を投与。経口摂取が可能な場合は経口補水液(ORS)を勧める。下痢の場合は、下痢の頻度と性状、電解質異常の有無を評価する。
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評価:尿量(0.5mL/kg/hr以上)の確保、バイタルサインの安定、体重の回復を確認する。
暗記のコツ
「
下痢は等張」と覚えましょう。消化管から出る液体は、基本的に血液と同じ浸透圧(等張)です。発熱、尿崩症、糖尿病、発汗は「水だけが出ていく」イメージで高張性脱水と紐づけます。
国試頻出ポイント
等張性脱水の原因として「下痢」「嘔吐」は毎年出題される必須知識です。また、高張性脱水と低張性脱水の原因と鑑別もセットで出題されます。特に、高齢者の下痢による脱水は、誤嚥性肺炎後の経口摂取低下と合併しやすく、重症化リスクが高いため、事例問題でもよく扱われます。
出題パターン注意!
単純な「どれが等張性脱水の原因か」という知識問題だけでなく、「下痢の患者さんにみられる脱水の種類とその根拠は?」「脱水の種類によってどの輸液を選択すべきか」といった、病態と治療を統合した問題が出題されます。