核心解説
この問題は、
バソプレシン (Vasopressin / 抗利尿ホルモン, ADH) の生理作用を問う、基礎的な内分泌看護の問題です。
体液量と浸透圧の恒常性 (Fluid and Osmotic Homeostasis) を理解する上で、最も重要なホルモンの一つです。バソプレシンは、視床下部で合成され、下垂体後葉から分泌されます。その主な作用は、腎臓の
集合管 (Collecting Duct) に作用し、水の再吸収を促進することで尿量を減少させ、体内の水分を保持することです。これにより、血漿浸透圧を正常範囲(
285 mOsm/L 前後)に維持しています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②番が正解です。バソプレシンは、腎臓の集合管にある
V2受容体 (V2 Receptor) に結合し、
アクアポリン2 (Aquaporin-2) 水チャネル を細胞膜表面に挿入させます。これにより、水の透過性が亢進し、尿細管内の水が濃度勾配に従って再吸収され、尿が濃縮されます。この作用が、体内の水分量を調節し、脱水や水中毒を防ぐ上で極めて重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番の血管拡張作用は、バソプレシンの高濃度時のV1受容体を介した昇圧作用と混同しやすい部分ですが、生理的濃度では血管収縮作用を示し、昇圧ホルモンとしても働きます。
混同注意! ③番のカリウム排泄促進は
アルドステロン (Aldosterone)、⑤番のナトリウム再吸収促進も同じく
アルドステロンの作用です。④番の心拍出量増加はカテコラミン(アドレナリンなど)の作用であり、バソプレシンは血管収縮による後負荷増大でむしろ心拍出量を減少させる可能性があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
バソプレシン分泌が過剰な状態を
SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)、分泌が不足または腎臓の反応性が低下した状態を
尿崩症 (Diabetes Insipidus, DI) といいます。両疾患とも電解質異常(特に
低ナトリウム血症 / 高ナトリウム血症)をきたすため、看護師はバイタルサインや尿量、意識レベルの観察が重要です。また、
アルドステロンは「Na⁺貯留、K⁺排泄」、
バソプレシンは「水のみ再吸収」と、作用を明確に区別して暗記しましょう。
概念整理:
| ホルモン名 | 分泌部位 | 主な作用 | 関連疾患 |
|---|
| バソプレシン (ADH) | 視床下部 / 下垂体後葉 | 腎集合管での水再吸収促進(尿濃縮) | 尿崩症 (DI), SIADH |
| アルドステロン | 副腎皮質 | 腎遠位尿細管でのNa⁺再吸収促進、K⁺排泄促進 | 原発性アルドステロン症, アジソン病 |
一目で比較!:
「バソプレシンは水のみ、アルドステロンはナトリウムとカリウム」と覚えましょう。アルドステロンはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 (RAAS) の一部であり、血圧調節にも深く関わります。
看護過程ポイント:
-
アセスメント (Assessment): 尿量(特に乏尿か多尿か)、尿比重・浸透圧、血清Na⁺濃度、血漿浸透圧、意識レベル、皮膚ツルゴールの観察。
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看護診断 (Nursing Diagnosis): 「体液量過剰 / 体液量不足リスク状態」「電解質バランス異常リスク状態」。
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看護介入 (Intervention): 尿量測定(1時間ごとまたは時間尿)、体重測定、水分出納バランスの正確な記録。SIADHでは水分制限、尿崩症では十分な水分補給とバソプレシン補充療法の補助。
暗記のコツ:
「
バソプレシンはWater!(水のみ)」と語呂合わせで覚えましょう。アルドステロンは「
Na⁺ためて、K⁺出す」と覚えると、電解質異常の病態が理解しやすくなります。
国試頻出ポイント:
ホルモンとその作用の組み合わせは、毎年のように出題される頻出テーマです。特に、バソプレシン、アルドステロン、心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) の3つは、水・電解質バランスの調整において比較問題として必ず押さえておきましょう。
出題パターン注意!:
単純な作用の知識だけでなく、「SIADHの患者のアセスメントとして適切なのはどれか」「尿崩症の患者の看護で正しいのはどれか」といった、疾患名とセットになった臨床状況設定問題にも発展します。病態と看護介入を結びつけて学習しましょう。