核心解説
この問題は、酸塩基平衡異常(アシドーシス)に対する薬物療法の知識を問うています。アシドーシス(Acidosis)とは、血液中の水素イオン濃度が上昇し、pHが7.35未満に低下した状態です。これを補正するためには、体内でアルカリ(塩基)として働く薬剤を投与し、過剰な水素イオンを中和する必要があります。
1.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は
重炭酸ナトリウム (Sodium Bicarbonate) です。これは代表的な
アルカリ化薬 (Alkalizing Agent) であり、体内で
重炭酸イオン (HCO3-) を補充します。補充されたHCO3-は、過剰な水素イオン (H+) と結合し、炭酸 (H2CO3) となり、最終的に水 (H2O) と二酸化炭素 (CO2) として排出されます。この反応により、血液中のH+濃度が低下し、pHが上昇(正常化)します。主に重症の
代謝性アシドーシス (Metabolic Acidosis)(例: 糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) でpH7.1未満、心停止後の蘇生時など)に使用が考慮されます。
2.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
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混同注意! ②番の
ブドウ糖液 (Glucose Solution) は、エネルギー補給や低血糖の是正に用いられ、アシドーシスの直接的な補正効果はありません。
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混同注意! ③番の
酢酸リンゲル液 (Acetate Ringer's Solution) と ④番の
乳酸リンゲル液 (Lactate Ringer's Solution) は、いずれも細胞外液補充液(維持液・補正液)です。これらに含まれる酢酸や乳酸は肝臓で代謝されてHCO3-を産生するため、軽度のアシドーシス補正に間接的に寄与することはあります。しかし、「アシドーシス補正のため」に第一選択として投与される薬剤は重炭酸ナトリウムであり、酢酸リンゲル液や乳酸リンゲル液は主目的が循環血液量の維持・補正です。乳酸リンゲル液は、肝機能障害患者では乳酸の代謝が遅延し、かえってアシドーシスを悪化させるリスクがあるため注意が必要です。
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混同注意! ⑤番の
塩化ナトリウム (Sodium Chloride) は、生理食塩水の成分であり、Na+とCl-の補充が目的です。大量投与は高クロール性代謝性アシドーシスを誘発する可能性があるため、アシドーシスの補正には用いません。
3.
関連概念の整理 (Related Concepts):
アシドーシスは、原因により
代謝性アシドーシス (Metabolic Acidosis) と
呼吸性アシドーシス (Respiratory Acidosis) に分類されます。重炭酸ナトリウムは主に代謝性アシドーシスに使用されますが、呼吸性アシドーシスの根本治療は換気不全の改善(人工呼吸器の設定調整など)であり、重炭酸ナトリウムの投与は原則として行いません。また、重炭酸ナトリウムの投与には
ナトリウム過剰負荷(高ナトリウム血症、浮腫、心不全増悪) や
細胞内アシドーシスの一過性悪化(CO2が細胞内へ拡散するため)などのリスクがあり、使用は慎重に判断されます。
概念整理:
| 薬剤 | 主な作用・適応 | アシドーシス補正への関与 |
|---|
| 重炭酸ナトリウム | アルカリ化薬。HCO3-補充によるH+中和。重症代謝性アシドーシスに使用。 | 直接的 |
| 酢酸リンゲル液 | 細胞外液補充。酢酸が肝臓で代謝されHCO3-産生。 | 間接的・緩徐 |
| 乳酸リンゲル液 | 細胞外液補充。乳酸が肝臓で代謝されHCO3-産生。 | 間接的・緩徐(肝障害時は禁忌) |
一目で比較!:
| アシドーシスの種類 | 病態 | 治療の基本 | 重炭酸ナトリウム |
|---|
| 代謝性アシドーシス | HCO3-低下 | 原因疾患治療 + HCO3-補充 | 重症例で使用 |
| 呼吸性アシドーシス | PaCO2上昇 | 換気改善(人工呼吸器調整など) | 基本禁忌 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 動脈血液ガス分析(ABG)でpH, PaCO2, HCO3-, BE(基準値: pH 7.35-7.45, PaCO2 35-45mmHg, HCO3- 22-26mEq/L)を評価し、アシドーシスの種類と重症度を判断。
看護診断: 「非効果的な呼吸パターン」や「体液量不足リスク」が関連する場合がある。
介入: 医師の指示に基づき重炭酸ナトリウムを投与。血管外漏出による組織壊死に注意(高浸透圧薬のため)。投与中はABGとバイタルサイン、血清電解質(特にNa+)をモニタリング。
暗記のコツ: 「アシドーシスには『ベーキングソーダ(重曹)』=重炭酸ナトリウム!」と覚えましょう。酸を中和するアルカリ(塩基)の代表格です。
国試頻出ポイント: 重炭酸ナトリウムの適応(重症代謝性アシドーシス)、副作用(高Na血症、細胞内アシドーシス)、乳酸リンゲル液の禁忌(肝障害)はセットで頻出です。
出題パターン注意!: 単純な薬剤の適応を問う問題から、「心停止後の蘇生中、血液ガス分析でpH 7.1。この患者に投与すべき薬剤は?」のような状況設定問題へ発展します。