核心解説
この問題は、電解質異常である
低カリウム血症 (Hypokalemia) の代表的な症状を問うています。カリウムイオンは細胞内の主要な陽イオンであり、心筋や骨格筋の細胞膜の興奮性、神経伝達に深く関与しています。この病態生理を理解することが、正解を導く鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 選択肢④の
不整脈(期外収縮) が正解です。低カリウム血症では、心筋細胞の活動電位における再分極過程が遅延し、心筋の興奮性が異常に亢進します。その結果、
期外収縮 (Premature Contraction) や
心室頻拍 (Ventricular Tachycardia)、さらには心室細動 (Ventricular Fibrillation) などの致死性不整脈が発生しやすくなります。心電図 (ECG) では、T波の平低化、U波の出現が特徴的です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 便秘は、低カリウム血症による腸管平滑筋の弛緩(蠕動運動低下)で生じる症状であり、正しい症状の一つではありますが、最も頻出かつ致死的な症状である不整脈と比較すると、本問では不整脈の方が優先されます。
②
混同注意! テタニー (Tetany) は、
低カルシウム血症 (Hypocalcemia) の代表的な症状です。低カリウム血症では、むしろ筋力低下や弛緩性麻痺が生じます。
③
混同注意! 筋緊張の亢進は、
高カリウム血症 (Hyperkalemia) の初期症状として見られることがあります。低カリウム血症では、筋細胞の脱分極が阻害されるため、筋力低下や弛緩性麻痺が生じます。
⑤ 多尿は、低カリウム血症による腎臓の濃縮能障害(尿崩症様症状)で見られることがありますが、これは比較的進行した状態での症状であり、不整脈の方がより直接的な致死的症状として重要です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
血清カリウム値の正常範囲は
3.5~5.0 mEq/L です。低カリウム血症は、利尿薬(特にループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬)の使用、下痢・嘔吐による消化液喪失、インスリン療法などで生じやすいです。逆に、
高カリウム血症 (Hyperkalemia) では、心電図上T波の尖鋭化(テント状T波)が見られ、徐脈や心停止のリスクがあります。この二つの電解質異常は、心電図変化と対比して覚えることが国試対策のポイントです。
概念整理:
低カリウム血症 (Hypokalemia) → 心筋興奮性亢進 →
不整脈(期外収縮)。筋・腸管弛緩 → 筋力低下・便秘。低Ca血症 → テタニー。
一目で比較!:
| 電解質異常 | 主要症状 | 心電図変化 |
| 低K血症 | 不整脈・筋力低下・便秘 | T波平低化・U波出現 |
| 高K血症 | 筋緊張亢進・徐脈・心停止 | T波尖鋭化(テント状T波) |
| 低Ca血症 | テタニー・しびれ | QT延長 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 血清K値の確認、利尿薬内服の有無、心電図モニターの波形観察、筋力・腸蠕動音の評価。
看護診断: リスク状態(不整脈、転倒)。
計画・実施: 医師の指示に基づくK補正(静脈内投与時は濃度・速度厳守、血管痛に注意)、心電図モニター監視、転倒予防策の実施。
評価: 血清K値が基準範囲内に改善、不整脈の消失、筋力の回復。
暗記のコツ: 「Kが低いと、心臓はピクピク(期外収縮)、筋肉はグニャグニャ(筋力低下)」と覚えましょう。「テタニーはCa不足」でセットで覚えると混同しません。
国試頻出ポイント: 低K血症の原因(特にフロセミドなどの利尿薬)、症状(不整脈、筋力低下)、心電図所見(U波)、治療時の注意点(急速補正による不整脈誘発)の組み合わせが頻出です。
出題パターン注意!: 事例問題で「心不全でフロセミド内服中の患者に期外収縮が出現」のような形で出題されます。薬剤名と症状を結びつけて考えられるようにしましょう。