脱水症の評価において、細胞外液量減少の指標となるのはどれか。 | MyMerci
内部環境調節機能の障害
問題

脱水症の評価において、細胞外液量減少の指標となるのはどれか。

解説
細胞外液量の減少(等張性脱水や高張性脱水)では、血液が濃縮されるためヘマトクリット値が上昇します。血清ナトリウム濃度の上昇は高張性脱水でみられますが、等張性脱水では正常範囲内であるため、細胞外液量減少の指標としてはヘマトクリット値がより直接的です。

詳細解説

核心解説 この問題は、脱水症 (Dehydration) の評価指標を問うています。脱水症は大きく分けて、細胞外液(血管内+間質液)の減少と細胞内液の減少という2つの側面から評価する必要があります。特に「細胞外液量減少」に着目することが鍵です。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): 脱水症は、水分と電解質の喪失状態です。喪失の割合により、等張性脱水 (Isotonic Dehydration)高張性脱水 (Hypertonic Dehydration)低張性脱水 (Hypotonic Dehydration) に分類されます。問題で問われている「細胞外液量減少」とは、血管内の血液量が減る「循環血液量減少 (Hypovolemia)」を指します。この時、血液中の細胞成分である赤血球の割合が相対的に増えるため、血液濃縮 (Hemoconcentration) が生じます。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 正解は②番の ヘマトクリット値の上昇 (Elevated Hematocrit) です。 ヘマトクリット (Ht) 値は、血液中の赤血球の容積割合を示します。 細胞外液(特に血漿)が減少すると、血液が濃縮され、赤血球の割合が相対的に増加します。このため、循環血液量減少 (Hypovolemia) の指標として非常に有用です。正常値は男性で約40-50%、女性で約35-45%ですが、脱水時にはこれ以上に上昇します。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis): - 混同注意! ①番の血糖値の上昇は、主に 糖尿病 (Diabetes Mellitus) による高血糖性脱水(高張性脱水の一種)でみられますが、細胞外液量減少の直接的な指標ではありません。むしろ、浸透圧利尿による体液喪失の原因となります。 - ③番の血清ナトリウム濃度の上昇(高Na血症)は、高張性脱水 (Hypertonic Dehydration) でみられる所見です。しかし、等張性脱水 (Isotonic Dehydration)(例:下痢による脱水)では血清Na値は正常範囲内であるため、細胞外液量減少の指標としては特異性が低いです。 - ④番の血清カリウム濃度の低下は、脱水症よりもむしろ 利尿薬の使用嘔吐・下痢 によるK+喪失を示唆しますが、細胞外液量減少の直接的な指標ではありません。 - ⑤番の血清カルシウム濃度の上昇は、脱水による血液濃縮で軽度上昇することはありますが、ヘマトクリットほど直接的な指標ではなく、むしろ 副甲状腺機能亢進症 (Hyperparathyroidism)悪性腫瘍 (Malignancy) の鑑別に用いられます。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): - 脱水症の評価では、バイタルサイン(血圧低下、脈拍数増加、皮膚ツルゴール低下、口腔内乾燥) と併せて、血清浸透圧 (Serum Osmolality)BUN/Cr比(BUN優位の上昇)も参考にします。 - ヘマトクリット (Ht) は、脱水だけでなく、多血症 (Polycythemia)慢性閉塞性肺疾患 (COPD) による二次性多血症でも上昇するため、臨床症状と合わせた総合判断が必要です。
概念整理:
脱水の種類血清Na値細胞外液量ヘマトクリット主な原因
等張性脱水正常 (135-145mEq/L)減少上昇下痢、嘔吐、出血
高張性脱水上昇 (>145mEq/L)減少上昇発熱、糖尿病性ケトアシドーシス (DKA)
低張性脱水低下 ( 20、血圧低下、頻脈 - 細胞内液量減少 → 血清Na上昇(高張性脱水)、口渇、皮膚ツルゴール低下
看護過程ポイント: - アセスメント: バイタルサイン(特に 血圧低下、脈拍数増加、起立性低血圧)、皮膚の張り(ツルゴール)、口腔粘膜の乾燥、体重減少の程度を確認。 - 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「体液量減少 (Deficient Fluid Volume)」または「循環血液量減少リスク (Risk for Decreased Cardiac Output)」 - 計画・実施: 医師の指示に基づく 輸液療法 (Fluid Therapy)(等張性脱水には乳酸リンゲル液や生理食塩液、高張性脱水には5%ブドウ糖液など)の確実な実施。経口摂取可能な患者への水分摂取の促進。I/Oバランスの厳密な記録。 - 評価: バイタルサインの安定化、尿量の増加(>30mL/時間)、Ht値の正常化。
暗記のコツ: 「ヘマトクリットは血液の『濃さ』を測る指標」と覚えましょう!脱水で血液が濃くなると、Htは上がります。逆に、混同注意! 貧血(Anemia)ではHtは下がります。
国試頻出ポイント: - 脱水の種類(等張性/高張性/低張性)と、それぞれの血清Na値、治療輸液の組み合わせ。 - 「細胞外液減少」=「循環血液量減少」の指標として、Ht、BUN/Cr比、バイタルサインがセットで出題されます。 - 状況設定問題(事例問題)では、「下痢が続く高齢者の脱水」などの具体的シナリオで、どの輸液を選択するかが問われます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(「細胞外液量減少の指標は?」)から、状況設定問題(「70歳女性、嘔吐と下痢で来院。血圧90/60mmHg、脈拍110/分、皮膚乾燥著明。検査値で最も期待されるのは?」)へ発展します。Ht上昇を選ぶのはもちろん、同時に「等張性脱水であれば血清Naは正常」という知識も必要になります。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 「65歳男性、肺炎 (Pneumonia) で入院中。発熱と食欲不振が続き、3日間で体重が2kg減少。朝の採血結果でHtが48%から52%に上昇(基準値42-48%)、BUN/Cr比が25と上昇していました。バイタルサインは血圧98/62mmHg(臥位)、脈拍96/分、口腔粘膜は乾燥しており、皮膚ツルゴールも低下しています。あなたは担当看護師です。この患者さんの脱水状態をどのようにアセスメントし、医師に報告しますか?」 - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 1. 観察 (Assessment): まずバイタルサインを再確認。特に 起立性低血圧 の有無をチェック(臥位→立位で収縮期血圧が20mmHg以上低下)。皮膚ツルゴール、口腔内、眼窩の陥没を観察。I/Oバランス(過去3日間の輸液量と尿量)を確認。 2. 報告 (SBAR): - S (Situation): 「65歳男性、肺炎入院中の◯◯さんですが、脱水の兆候を認めています。」 - B (Background): 「3日間、発熱と食欲不振が続き、経口摂取が不良でした。本日の採血でHtが52%に上昇、BUN/Cr比25です。」 - A (Assessment): 「循環血液量減少による脱水とアセスメントしています。血圧98/62と低めで、皮膚ツルゴールも低下しています。」 - R (Recommendation): 「経静脈的な輸液療法の開始が必要と考えます。指示をお願いします。」 3. 介入 (Intervention): 医師の指示を受け、末梢静脈ルートを確保。等張性脱水を疑い、乳酸リンゲル液 (Lactated Ringer's Solution) または 生理食塩液 (Normal Saline) の投与を開始。投与速度は医師の指示に従い、500mLを1-2時間で投与するなど、急速輸液を行う場合もあります。 4. 評価 (Evaluation): 輸液後、バイタルサインの安定化(収縮期血圧100mmHg以上、脈拍80/分台)、尿量増加(>30mL/時間)、Ht値の低下傾向を確認。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 最重要! 高齢者や心不全 (Heart Failure) 患者では、急速な輸液による 循環血漿過負荷 (Circulatory Overload) に注意が必要です。肺水腫(呼吸困難、SpO2低下、頸静脈怒張)の兆候を観察しながら投与します。また、電解質異常(特にK+)の補正も同時に行う必要があります。
看護プロトコル: - 観察項目: バイタルサイン(15-30分毎)、尿量(1時間毎)、呼吸音(ラ音の有無)、頸静脈怒張、末梢冷感、意識レベル - 報告基準 (SBAR): 上記参照 - 記録のポイント: I/Oバランス(正確な輸液量と尿量)、体重(毎日測定)、皮膚・粘膜の状態、患者の訴え(口渇、めまいなど) - 家族への説明の留意点: 「お父様は脱水の状態です。今、点滴で水分を補っています。しばらく安静が必要で、少しずつ水分が取れるようになったら、お茶やお水をこまめに飲んでいただくようにしましょう。」
先輩看護師の一言: 「脱水の患者さんを見たら、まず『なぜ脱水になったのか(原因)』と『どのタイプの脱水か(Na濃度)』を考えましょう!Htは血液の濃さ、Naは体液の濃さを示すと覚えると整理しやすいですよ。そして、輸液を開始したら、心不全の兆候を見逃さないことが一番大事。肺の聴診は必ず行ってくださいね!」

重要概念

  • 脱水症 — 体内の水分と電解質が欠乏した状態。等張性、高張性、低張性に分類される。
  • ヘマトクリット — 血液中の赤血球の容積割合。脱水による血液濃縮で上昇し、貧血で低下する。
  • 細胞外液 (Extracellular Fluid) — 細胞の外にある体液。血管内の血漿と細胞間の間質液を含む。循環血液量の主体。
  • 血液濃縮 — 血漿量の減少により、血液中の赤血球やタンパク質の濃度が相対的に上昇する現象。
  • 循環血液量減少 — 血管内の血液量が減少した状態。血圧低下、頻脈、尿量減少を引き起こす。

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