70歳男性。大腸癌によるイレウスと診断された。緊急入院時の看護で優先度が最も高いのはどれか。 | MyMerci
排泄機能の障害
問題

70歳男性。大腸癌によるイレウスと診断された。緊急入院時の看護で優先度が最も高いのはどれか。

解説
イレウスでは腸管内容物の通過障害により嘔吐や脱水が生じやすく、経口摂取制限とともに輸液による水分・電解質補正が最優先される。浣腸や下剤の投与は腸管穿孔のリスクがあるため禁忌である。経鼻胃管挿入も重要だが、まずは全身状態の安定化が優先される。

詳細解説

核心解説 この問題は、イレウス (Ileus/Intestinal Obstruction) の緊急入院時における看護の優先順位を問うています。イレウスでは腸管内容物の通過障害により、大量の消化液(胃液、胆汁、膵液など)が腸管内に貯留し、嘔吐や腹部膨満を引き起こします。 この結果、体内から水分と電解質(特にNa⁺, K⁺, Cl⁻)が急激に喪失され、脱水 (Dehydration)電解質異常 (Electrolyte Imbalance)、さらには循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) に至る可能性があります。したがって、緊急時には 最重要! まず 経口摂取の完全な制限(絶飲食 (NPO)) と、輸液療法 (Fluid Therapy) による循環血液量と電解質バランスの是正 が最優先されます。これは、生命を脅かす ショック (Shock) や腎不全 (Renal Failure) の予防 という観点からです。 正解の根拠 (Answer Rationale) 正解は④です。イレウスでは腸管内の内容物が停滞し、腸管内圧が上昇しています。この状態で経口摂取を継続すると、嘔吐が誘発されて脱水がさらに進行します。また、腸管内の細菌が増殖し、腸管壁を透過して敗血症 (Sepsis) を引き起こすリスク も高まります。したがって、絶飲食を徹底し、輸液によって不足している水分と電解質を補充することが最優先の看護介入 です。 誤答の分析 (Distractor Analysis) 混同注意! ①浣腸と②下剤の投与は、単純性便秘とは病態が全く異なり、腸管穿孔 (Intestinal Perforation) や腸管破裂を誘発する危険な行為 であり、機械的イレウス(大腸癌による)では絶対禁忌です。③腹部の温罨法は、炎症を増悪させたり、腸管運動を不必要に亢進させて痛みを強くする可能性があるため、イレウス急性期には推奨されません。⑤経鼻胃管 (Nasogastric Tube) 挿入による減圧(胃内容物の持続吸引)も重要な治療の一つですが、それは④の全身管理(輸液)が確立された上で、あるいはそれと同時並行で行われます。問題文は「優先度が最も高い」と聞いているため、全身状態の安定化である④が⑤より優先されます。 関連概念の整理 (Related Concepts) イレウスは、機械的イレウス(腫瘍、癒着、ヘルニア嵌頓などによる物理的閉塞)と機能的イレウス(術後や腹膜炎による腸管麻痺)に大別されます。いずれも共通する初期治療は 絶飲食 + 輸液 + 経鼻胃管減圧 です。また、低カリウム血症 (Hypokalemia) は腸管運動を低下させ、麻痺性イレウスの原因となるため、電解質補正は治療の根幹です。 概念整理 - イレウス (Ileus): 腸管内容物の通過障害。病態は「閉塞」と「脱水」の二大要素。 - 最優先看護: バイタルサイン安定化のための 循環血液量の確保(輸液)と 腸管安静(絶飲食)。 - 絶対禁忌行為: 腸管穿孔リスクのある 浣腸下剤投与高位注腸一目で比較!
病態機械的イレウス (大腸癌など)機能的イレウス (術後麻痺)
原因物理的閉塞腸管運動の停止
腹部所見疝痛発作、金属性腸雑音腹部全体の膨満、腸雑音減弱
共通の初期治療絶飲食 + 輸液 + 胃管減圧絶飲食 + 輸液 + 胃管減圧
禁忌行為浣腸、下剤(絶対禁忌)浣腸、下剤(絶対禁忌)
看護過程ポイント - アセスメント: バイタルサイン(特に血圧、脈拍、尿量)で脱水とショックの程度を評価。腹部の視診・聴診・打診で腸蠕動音の有無・性状を確認。腹部単純X線写真やCT所見から閉塞部位を把握。 - 看護診断: 「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」「腸管内容物の通過障害 (Ineffective Gastrointestinal Motility)」。 - 計画・実施: 指示された輸液ルートの確保と正確な流量管理。絶飲食の徹底と患者・家族への説明。経鼻胃管挿入時は挿入長の確認、固定、吸引圧の管理、排液の性状・量観察。 - 評価: バイタルサイン安定、尿量確保、腹部膨満感の軽減、電解質値の正常化。 暗記のコツイレウス=腸が止まった=入れても出せない」と覚えましょう。腸が詰まっているのに、さらに下剤を入れたり浣腸をしたりすると、パンク(穿孔)します。覚える優先順位は「点滴でカラダを守る(脱水補正)→ 管でお腹を楽にする(減圧)」の順です。 国試頻出ポイント イレウスは、術後合併症としての麻痺性イレウス(機能的イレウス)と、今回のような癌による機械的イレウスの両方が頻出です。問われるポイントは「なぜ絶飲食と輸液が優先されるのか(生命維持のため)」「なぜ浣腸や下剤が禁忌なのか(穿孔リスク)」の2点に尽きます。状況設定問題では、術後2日目に患者が腹部膨満と嘔吐を訴えた場合の看護介入などで出題されます。 出題パターン注意! 「イレウス患者の術後管理」や「イレウス症状を呈した高齢者の初期対応」といった形で、症状からのアセスメント能力を問う問題に発展します。例えば「腹部が板状硬、圧痛あり」の場合は穿孔性腹膜炎を疑い、緊急手術の準備が必要です。単なるイレウスの知識だけでなく、バイタルサインと腹部所見を総合的に判断する力を養いましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 70歳男性、大腸癌によるイレウスの緊急入院事例です。患者は「お腹が張って痛い、吐き気がする」と訴え、腹部は著明に膨満し、腸蠕動音は亢進(金属性)しています。バイタルサインは血圧 90/60 mmHg、脈拍 110/分、呼吸数 24/分と、ショックバイタル を示しています。 看護介入と判断戦略 1. 観察・アセスメント: まずバイタルサイン(血圧、脈拍、SpO2)と尿量を確認。意識レベルもチェック(JCS)。腹部の視診(膨満の程度、手術痕の有無)、聴診(腸蠕動音の有無と性状)、打診(鼓音か濁音か)を系統的に実施。さらに、痛みの性状(持続性か疝痛か)と嘔吐の有無を確認。 2. 報告(SBAR): 医師へ S(状況): 「イレウスの患者、血圧低下あり」、B(背景): 「大腸癌によるイレウス」、A(アセスメント): 「脱水と循環血液量減少の可能性が高い。腸管穿孔の兆候はない」、R(提案): 「絶飲食の指示、輸液開始、経鼻胃管挿入の準備を依頼したい」と報告します。 3. 介入: 指示に基づき、太い末梢ルート(18G以上)を確保し、乳酸リンゲル液などの輸液を開始。絶飲食を徹底するためのベッドサイドのサインと患者・家族への説明。経鼻胃管挿入の準備(滅菌手袋、潤滑剤、固定用テープ、吸引器)。必要に応じて酸素投与。 4. 評価: 輸液開始後、血圧が上昇傾向にあるか、尿量が確保されているか(目標 30ml/hr以上)を確認。腹部膨満が改善するか、痛みが軽減するかを継続観察。 患者安全・注意事項 - 最重要! 浣腸や下剤の投与は絶対禁忌。腸管穿孔を起こすと緊急開腹手術となり、予後が著しく悪化します。 - 経鼻胃管挿入時は、患者の誤嚥を防ぐため、頭部を30度以上挙上する。意識レベルが低い場合は特に注意。 - 高齢者は予備能が低く、急激な脱水や電解質異常から腎不全や心不全に陥りやすいため、輸液速度と尿量の管理を厳重に行う。 看護プロトコル - 観察項目: バイタルサイン(4時間ごと)、腹部所見(6時間ごと)、排液の性状と量(1時間ごと)、尿量(1時間ごと)、意識レベル(毎回のラウンド時)、痛みの評価(Numerical Rating Scale: NRS)。 - 報告基準: バイタルサインの悪化(特に血圧低下)、腹部の圧痛や筋性防御の出現、排液量が突然減少した場合、尿量が20ml/hr未満が2時間続く場合。 - 記録のポイント: 絶飲食開始時刻、輸液開始時刻と種類・流量、経鼻胃管挿入の有無と吸引圧・排液性状、患者の訴え(「お腹が張って痛い」「気持ち悪い」など)の経時的変化。 先輩看護師の一言 「イレウスの患者さんは、お腹の痛みと吐き気でとてもつらい思いをしています。看護師として最初にできることは、『何も口にしないでいいですよ』と安心させてあげることと、すぐに点滴を始めてあげることです。『浣腸をしたら楽になるのでは?』と思ってしまうかもしれませんが、それは大きな間違い!病態をしっかり理解していれば、なぜ点滴が最優先なのか、なぜ浣腸が禁忌なのか、患者さんにも自信を持って説明できますよ。国試でも現場でも、この基本があなたを守ります!」

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