核心解説
この問題は、
イレウス (Ileus/Intestinal Obstruction) の緊急入院時における看護の優先順位を問うています。
イレウスでは腸管内容物の通過障害により、大量の消化液(胃液、胆汁、膵液など)が腸管内に貯留し、嘔吐や腹部膨満を引き起こします。 この結果、体内から水分と電解質(特にNa⁺, K⁺, Cl⁻)が急激に喪失され、
脱水 (Dehydration)、
電解質異常 (Electrolyte Imbalance)、さらには
循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) に至る可能性があります。したがって、緊急時には
最重要! まず
経口摂取の完全な制限(絶飲食 (NPO)) と、
輸液療法 (Fluid Therapy) による循環血液量と電解質バランスの是正 が最優先されます。これは、生命を脅かす
ショック (Shock) や腎不全 (Renal Failure) の予防 という観点からです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④です。イレウスでは腸管内の内容物が停滞し、腸管内圧が上昇しています。この状態で経口摂取を継続すると、嘔吐が誘発されて脱水がさらに進行します。また、腸管内の細菌が増殖し、
腸管壁を透過して敗血症 (Sepsis) を引き起こすリスク も高まります。したがって、絶飲食を徹底し、
輸液によって不足している水分と電解質を補充することが最優先の看護介入 です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①浣腸と②下剤の投与は、単純性便秘とは病態が全く異なり、
腸管穿孔 (Intestinal Perforation) や腸管破裂を誘発する危険な行為 であり、機械的イレウス(大腸癌による)では絶対禁忌です。③腹部の温罨法は、炎症を増悪させたり、腸管運動を不必要に亢進させて痛みを強くする可能性があるため、イレウス急性期には推奨されません。⑤経鼻胃管 (Nasogastric Tube) 挿入による減圧(胃内容物の持続吸引)も重要な治療の一つですが、それは④の全身管理(輸液)が確立された上で、あるいはそれと同時並行で行われます。問題文は「
優先度が最も高い」と聞いているため、全身状態の安定化である④が⑤より優先されます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
イレウスは、機械的イレウス(腫瘍、癒着、ヘルニア嵌頓などによる物理的閉塞)と機能的イレウス(術後や腹膜炎による腸管麻痺)に大別されます。いずれも共通する初期治療は
絶飲食 + 輸液 + 経鼻胃管減圧 です。また、低カリウム血症 (Hypokalemia) は腸管運動を低下させ、麻痺性イレウスの原因となるため、電解質補正は治療の根幹です。
概念整理
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イレウス (Ileus): 腸管内容物の通過障害。病態は「
閉塞」と「
脱水」の二大要素。
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最優先看護: バイタルサイン安定化のための
循環血液量の確保(輸液)と
腸管安静(絶飲食)。
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絶対禁忌行為: 腸管穿孔リスクのある
浣腸、
下剤投与、
高位注腸。
一目で比較!
| 病態 | 機械的イレウス (大腸癌など) | 機能的イレウス (術後麻痺) |
|---|
| 原因 | 物理的閉塞 | 腸管運動の停止 |
| 腹部所見 | 疝痛発作、金属性腸雑音 | 腹部全体の膨満、腸雑音減弱 |
| 共通の初期治療 | 絶飲食 + 輸液 + 胃管減圧 | 絶飲食 + 輸液 + 胃管減圧 |
| 禁忌行為 | 浣腸、下剤(絶対禁忌) | 浣腸、下剤(絶対禁忌) |
看護過程ポイント
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アセスメント: バイタルサイン(特に血圧、脈拍、尿量)で脱水とショックの程度を評価。腹部の視診・聴診・打診で腸蠕動音の有無・性状を確認。腹部単純X線写真やCT所見から閉塞部位を把握。
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看護診断:
「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」、
「腸管内容物の通過障害 (Ineffective Gastrointestinal Motility)」。
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計画・実施: 指示された輸液ルートの確保と正確な流量管理。絶飲食の徹底と患者・家族への説明。経鼻胃管挿入時は挿入長の確認、固定、吸引圧の管理、排液の性状・量観察。
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評価: バイタルサイン安定、尿量確保、腹部膨満感の軽減、電解質値の正常化。
暗記のコツ
「
イレウス=腸が止まった=入れても出せない」と覚えましょう。腸が詰まっているのに、さらに下剤を入れたり浣腸をしたりすると、パンク(穿孔)します。覚える優先順位は「
点滴でカラダを守る(脱水補正)→ 管でお腹を楽にする(減圧)」の順です。
国試頻出ポイント
イレウスは、術後合併症としての麻痺性イレウス(機能的イレウス)と、今回のような癌による機械的イレウスの両方が頻出です。問われるポイントは「なぜ絶飲食と輸液が優先されるのか(生命維持のため)」「なぜ浣腸や下剤が禁忌なのか(穿孔リスク)」の2点に尽きます。状況設定問題では、術後2日目に患者が腹部膨満と嘔吐を訴えた場合の看護介入などで出題されます。
出題パターン注意!
「イレウス患者の術後管理」や「イレウス症状を呈した高齢者の初期対応」といった形で、
症状からのアセスメント能力を問う問題に発展します。例えば「腹部が板状硬、圧痛あり」の場合は穿孔性腹膜炎を疑い、緊急手術の準備が必要です。単なるイレウスの知識だけでなく、バイタルサインと腹部所見を総合的に判断する力を養いましょう。