核心解説
この問題は、
狭心症 (Angina Pectoris) の病態分類、特に
不安定狭心症 (Unstable Angina, UA) の特徴を問うています。
不安定狭心症は、冠動脈の不安定なプラーク破綻と血栓形成が病態の中心であり、急性冠症候群 (ACS) の一形態です。 安定狭心症とは異なり、労作とは無関係に安静時にも発症し、増悪傾向がある点が核心です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②番「安静時に胸痛が出現し、増悪傾向を示す」が正解です。不安定狭心症は、以下の3つのパターンに分類される病態です。
1.
安静時狭心症: 労作と無関係に、安静時に発症する胸痛。
2.
新規発症狭心症: これまでに狭心症状がなく、新たに発症した狭心症で、労作閾値が低い。
3.
増悪型狭心症: これまでの安定狭心症から、発作の頻度・持続時間・強度が増加し、軽度の労作でも発症するようになった状態。
これらの共通点として、症状が
増悪傾向 (Progressive Deterioration)にあることが特徴です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番「労作時にのみ出現する胸痛である」 →
混同注意! これは安定狭心症 (Stable Angina) の特徴です。安定狭心症では、運動や精神的ストレスといった労作時に冠動脈の器質的狭窄により需要と供給のバランスが崩れ、胸痛が生じます。安静にすると速やかに改善します。
③番「心筋障害マーカーが持続的に上昇する」 →
混同注意! これは急性心筋梗塞 (Acute Myocardial Infarction, AMI) の特徴です。不安定狭心症では、心筋壊死に至っていないため、心筋障害マーカー(トロポニンT、CK-MBなど)は上昇しません。もし上昇すれば、非ST上昇型心筋梗塞 (NSTEMI) と診断されます。
④番「心電図で異常Q波が認められる」 →
混同注意! 異常Q波 (Pathological Q wave) は、心筋壊死後に生じる電気的な瘢痕であり、陳旧性心筋梗塞や一部の急性心筋梗塞で認められます。不安定狭心症では心筋壊死がないため、異常Q波は認められません。心電図では一過性のST低下やT波逆転がみられることがあります。
⑤番「ニトログリセリンで速やかに改善する」 → 不安定狭心症では、冠動脈内の血栓形成により血流障害が生じており、ニトログリセリンの効果は安定狭心症と比較して不安定で、効果が乏しい場合や持続時間が短いことが多いです。完全に効果がないわけではありませんが、「速やかに改善する」のは安定狭心症の特徴です。
概念整理: 冠動脈疾患の病態スペクトラムとして、
安定狭心症 → 不安定狭心症 → 非ST上昇型心筋梗塞 (NSTEMI) → ST上昇型心筋梗塞 (STEMI) という連続性を理解することが重要です。不安定狭心症と心筋梗塞の最大の違いは、
心筋壊死の有無です。
一目で比較!:
| 項目 | 安定狭心症 | 不安定狭心症 | 急性心筋梗塞 |
|---|
| 発症様式 | 労作時 | 安静時・新規・増悪 | 安静時・持続 |
| 心筋壊死 | なし | なし | あり |
| 心筋マーカー | 正常 | 正常 | 上昇 |
| 心電図変化 | ST低下 (一過性) | ST低下・T波逆転 (一過性) | ST上昇・異常Q波 |
| ニトログリセリン | 速やかに改善 | 効果は不安定・乏しいことも | 効果が乏しい |
看護過程ポイント: 不安定狭心症の患者をアセスメントする際は、
発作の頻度、持続時間、誘因、強度、ニトログリセリンの効果を詳細に観察します。胸痛が15分以上持続する、ニトログリセリンが効かない場合は、心筋梗塞への移行を疑い、すぐに医師へ報告し、心電図検査と心筋マーカー測定の準備をします。看護診断としては、
「非効果的冠状動脈灌流リスク状態」や
「不安」が優先されます。
暗記のコツ: 「不安定」という名前の通り、
症状が不安定で増悪傾向にあることをイメージしましょう。キーワードは「安静時」「増悪」「新規発症」の3つ。心筋梗塞と違って「マーカーが上がらない」点が鑑別のポイントです。
国試頻出ポイント: 不安定狭心症は、急性冠症候群 (ACS) の概念とセットで頻出です。心筋梗塞との鑑別点(特に心筋マーカーと心電図変化)、およびニトログリセリンの効果の違いは、必ず押さえておきましょう。
出題パターン注意!: 「70代男性、安静時に胸痛出現。ニトログリセリンを舌下投与するも改善がみられない。心電図でST低下を認める。優先的な対応は?」のような状況設定問題で出題されます。この場合、
心筋梗塞への移行を疑い、緊急で医師へ報告し、心電図モニタリングと静脈路確保を準備するという判断が求められます。