核心解説
この問題は、
手根管症候群 (Carpal Tunnel Syndrome) の診断に用いられる代表的な徒手検査法を問うています。
手根管症候群は、手首の手根管内を走行する
正中神経 (Median Nerve)が圧迫されることで、母指から環指橈側半分にかけてのしびれや疼痛、母指球筋の萎縮が生じる疾患です。診断には、症状を誘発または増強させる徒手検査法が有用であり、その中でも
ファレンテスト (Phalen Test)は特に重要です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題のテーマは「手根管症候群の診断的徒手検査法」です。正中神経が手根管内で圧迫される病態を理解し、その圧迫を増強させる肢位で症状が誘発されるかどうかを確認する検査法を選択する必要があります。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ①番の
ファレンテスト (Phalen Test)が正解です。これは、患者に両手の手背を合わせるように手関節を最大に屈曲させ、その肢位を30秒~1分間保持させる検査法です。この肢位によって手根管内圧が上昇し、正中神経の圧迫が増強されるため、しびれや疼痛が誘発されれば陽性と判断します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ②番
混同注意! アレンテスト (Allen Test)は、手の
橈骨動脈と尺骨動脈の血流の開存性(手掌血流の評価)を確認する検査法です。動脈血採血前や
radial arteryカテーテル挿入前に行われます。
- ③番
混同注意! パトリックテスト (Patrick Test / FABER Test)は、股関節の疾患、特に
変形性股関節症や仙腸関節障害の診断に用いられる検査法です。股関節を屈曲(Flexion)、外転(ABduction)、外旋(External Rotation)させる肢位をとらせます。
- ④番
ラセグテスト (Lasègue Test / Straight Leg Raise Test, SLR)は、
腰椎椎間板ヘルニアなどによる
坐骨神経痛 (Sciatica)の診断に用いられる代表的な検査法です。仰臥位で下肢を伸展位のまま他動的に挙上し、下肢後面に放散痛が誘発されるか確認します。
- ⑤番
トーマステスト (Thomas Test)は、
股関節屈曲拘縮の有無を評価する検査法です。仰臥位で片方の股関節を最大に屈曲させた時、反対側の下肢が伸展位から浮き上がるかどうかを確認します。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 手根管症候群の診断にはファレンテストの他に、
ティネル徴候 (Tinel Sign)も有名です。これは、手根管部(手首の手掌側)を軽く打診することで、正中神経領域に放散するしびれが誘発されるか確認する検査法です。両検査を合わせて評価することが多いです。
概念整理:
手根管症候群 (Carpal Tunnel Syndrome) は、手首の手根管内で正中神経が圧迫・絞扼される末梢神経障害です。診断には、正中神経の圧迫を増強する肢位で症状を誘発する
ファレンテストと、神経の圧痛点を打診する
ティネル徴候が代表的です。
一目で比較!:
| 徒手検査法 | 対象疾患/評価部位 | 検査方法のポイント |
|---|
| ファレンテスト | 手根管症候群 (正中神経) | 手関節を最大屈曲 |
| アレンテスト | 手掌の血流 (橈骨・尺骨動脈) | 手を握らせ血管を圧迫 |
| パトリックテスト | 股関節・仙腸関節疾患 | 股関節をFABER肢位に |
| ラセグテスト (SLR) | 腰椎椎間板ヘルニア (坐骨神経) | 仰臥位で下肢を伸展挙上 |
| トーマステスト | 股関節屈曲拘縮 | 片側股関節を最大屈曲 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 患者の訴え(しびれの部位、時間帯、誘因)と徒手検査所見を統合します。夜間や早朝に症状が増強する傾向があります。
看護診断: 「慢性疼痛 (Chronic Pain)」、「知覚障害 (Sensory Impairment)」など。手術療法(手根管開放術)後は、創部の観察、腫脹の管理、早期の手指運動の指導が重要です。
暗記のコツ: 「ファレン=
『屈』(Flexion)」と覚えましょう!「ファレン」の「フ」は「フレックス(屈曲)」の「フ」。手首を「屈曲」させる検査法とリンクさせると記憶に残りやすいです。また、「ラセグ=
『腰』(腰椎由来の坐骨神経痛)」というイメージも有効です。
国試頻出ポイント: 各徒手検査法と対象疾患の組み合わせは頻出です。特に「ファレンテスト=手根管症候群」「ラセグテスト=腰椎椎間板ヘルニア」「アレンテスト=血流評価」はセットで確実に押さえてください。近年は、単純な組み合わせだけでなく、「検査中に患者にどのような指示を出すか」といった状況設定問題も出題されています。
出題パターン注意!: 「50歳代女性、事務職。両手のしびれを訴え来院。特に夜間や早朝に症状が強い。診断のための徒手検査として適切なのはどれか。」のような事例問題で、症状から手根管症候群を疑い、検査法を選択させる出題が典型的です。正中神経支配領域の感覚障害(母指、示指、中指)の知識も併せて必要です。