核心解説
この問題は、
手術部位感染 (Surgical Site Infection, SSI) の予防策に関する知識を問うています。SSIは術後の主要な合併症の一つであり、
周術期管理 (Perioperative Management) における感染予防策の基本を理解することが求められます。正しい選択肢は、術中の手術室への出入りを制限し、空気中の微生物汚染を低減することです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②番「術中は手術室の出入りを最小限にする」が適切です。
手術室 (Operating Room) の出入りが増えると、スタッフの動きや衣服からの発塵により
空気中の浮遊細菌数 (Airborne Bacteria Count) が増加し、SSIのリスクが高まります。SSI予防ガイドラインでは、手術中のドアの開閉回数を最小限にすることが推奨されています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番「手術室の湿度を80%に保つ」は不適切です。手術室の適切な湿度は
40~60% とされています。80%は高すぎ、結露や細菌増殖の原因となります。
③番「術後は創部を24時間密閉ドレッシングする」は不適切です。術後創部のドレッシングは
48時間以上 密閉することが推奨されます。24時間では不十分であり、創部の保護期間として短すぎます。
④番「術前に患者の毛を剃毛する」は不適切です。
混同注意! 剃毛は皮膚の微細な損傷を引き起こし、SSIのリスクを高めるため、現在は推奨されていません。必要な場合は
クリッパー (Clipper) を使用した除毛が推奨されます。
⑤番「予防的抗菌薬は術後3日間投与する」は不適切です。
予防的抗菌薬 (Prophylactic Antibiotics) は、通常
手術開始30分~1時間前 に1回投与され、術後は24時間以内に投与を終了します。長期投与は耐性菌のリスクを高めるため避けるべきです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
混同注意! SSI予防のための周術期管理の基本は、以下の3つの柱を押さえましょう。
| カテゴリ | 適切な管理 | 不適切な管理(過去の誤った慣行) |
|---|
| 手術室環境 | 湿度40~60%、陽圧管理、入室制限 | 湿度80%以上、ドアの頻回な開閉 |
| 患者準備 | アルコール含有消毒薬での皮膚消毒、必要時のみクリッパー除毛 | 剃毛(カミソリ使用) |
| 予防的抗菌薬 | 手術開始30~60分前に1回投与、24時間以内終了 | 術後3日間以上の投与 |
概念整理: SSI予防の核心は「
清潔操作の徹底 (Strict Aseptic Technique)」と「
患者の感染防御能の温存 (Preservation of Host Defense)」です。手術室環境の制御、適切な術前皮膚準備、予防的抗菌薬の適正使用が重要です。
一目で比較!: 術前の毛の処理:
剃毛(感染リスク上昇) vs
クリッパー使用(推奨)。ドレッシング交換:24時間(不適切) vs 48時間以上(適切)。
看護過程ポイント:
- アセスメント:手術室環境(湿度、温度、出入り状況)の確認、患者の皮膚状態(剃毛痕、創傷の有無)の観察。
- 看護診断:感染リスク状態(Risk for Infection)。
- 計画:手術室スタッフの動線管理、ドアの開閉回数の記録、術後創部の観察計画(発赤、腫脹、排膿、疼痛の有無)。
- 評価:SSI発生率のモニタリング、予防策の遵守率の確認。
暗記のコツ: 「手術室の出入りは最小限」→「
空気の清潔を守る」。「剃毛しない」→「
皮膚のバリアを壊さない」。「予防的抗菌薬は術前1回」→「
タイミングが命」。
国試頻出ポイント: SSI予防策は、環境整備、患者準備、薬剤投与の3領域から毎年出題されます。特に「剃毛の禁止」「予防的抗菌薬の投与タイミング(手術開始前)」は必須知識です。
出題パターン注意!: 「SSI予防のために正しいのはどれか」という単純な組合せ問題に加えて、「術後3日目に創部から排膿がみられた患者への対応」のような状況設定問題(事例問題)で、アセスメント力が問われることもあります。