核心解説
この問題は、
膵臓 (Pancreas) の機能のうち、
外分泌 (Exocrine) と
内分泌 (Endocrine) の区別を正確に理解しているかを問うものです。
最重要! 膵臓は大きく2つの働きを持つ「二重機能臓器」です。外分泌機能は消化に関わり、内分泌機能は血糖調節に関わります。この2つを混同しないことが、膵臓の病態(膵炎、糖尿病など)を理解する上での基盤となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は⑤番「消化酵素を含む膵液を分泌する」です。
膵臓の
外分泌部 (Exocrine Pancreas)は、腺房細胞 (Acinar cells) から構成され、
トリプシン (Trypsin)、
リパーゼ (Lipase)、
アミラーゼ (Amylase) などの消化酵素を含むアルカリ性の
膵液 (Pancreatic Juice) を分泌します。この膵液は主膵管を通じて十二指腸に排出され、食物の消化(特にタンパク質、脂肪、炭水化物の分解)に不可欠な役割を果たします。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番「グレリンを分泌する」:
混同注意! グレリン (Ghrelin) は「空腹ホルモン」とも呼ばれ、主に
胃 (Stomach) から分泌され、成長ホルモン分泌促進や食欲亢進に働きます。膵臓からは分泌されません。
②番「インスリンを分泌する」:
混同注意! これは膵臓の
内分泌部 (Endocrine Pancreas / ランゲルハンス島, Islets of Langerhans) の機能です。インスリンはβ細胞から分泌され、血糖値を下げる働きがあります。
③番「ソマトスタチンを分泌する」:
混同注意! これも膵臓の内分泌部の機能で、δ (デルタ) 細胞から分泌されます。ソマトスタチンは、インスリンやグルカゴンの分泌を抑制する「抑制ホルモン」です。
④番「グルカゴンを分泌する」:
混同注意! これも膵臓の内分泌部の機能で、α (アルファ) 細胞から分泌されます。グルカゴンは血糖値を上げる働きがあります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
この問題の根底にあるのは、「膵臓の二重機能」の理解です。
-
外分泌機能: 消化酵素を含む膵液の分泌。膵液が何らかの原因で活性化・漏出すると、膵臓自体を消化する
急性膵炎 (Acute Pancreatitis) を引き起こします。
-
内分泌機能: ランゲルハンス島から分泌されるホルモン(インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン)。これらのバランスが崩れると
糖尿病 (Diabetes Mellitus) などの代謝疾患を引き起こします。
概念整理
| 機能区分 | 分泌部位 | 分泌される主な物質 | 主な働き |
|---|
| 外分泌 | 腺房細胞 | 膵液(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシノーゲンなど) | 消化(糖質・脂質・タンパク質の分解) |
| 内分泌 | ランゲルハンス島 (α, β, δ細胞) | グルカゴン (α細胞) / インスリン (β細胞) / ソマトスタチン (δ細胞) | 血糖調節 |
一目で比較!
-
膵臓の外分泌障害:
急性膵炎 (腹痛、背部痛、血清アミラーゼ・リパーゼ上昇)
-
膵臓の内分泌障害:
糖尿病 (高血糖、多飲多尿)
看護過程ポイント
-
アセスメント: 腹部症状(疼痛の部位・性質・放散痛の有無)に加え、血糖値の変動も観察します。膵炎では高血糖をきたすことがあります。
-
計画・介入: 膵炎患者には
絶食 (NPO) と
輸液療法 (Fluid Therapy) が優先され、消化酵素の分泌を抑制します。
-
評価: 血清アミラーゼ・リパーゼの正常化、腹痛の軽減、血糖値の安定を評価します。
暗記のコツ
- 「膵臓(すいぞう)」=「スイ(消化)+ゾウ(臓器)」と覚えると、まず消化(外分泌)のイメージが湧きます。
- 内分泌ホルモンは「グルカゴン(G)・インスリン(I)・ソマトスタチン(S)」=「G.I.S.(ギス)」と覚えましょう。
国試頻出ポイント
- 膵臓の外分泌と内分泌の機能対比は、ほぼ毎年のように出題されます。
- 問題文で「外分泌」と限定された場合、必ず「消化酵素を含む膵液の分泌」が正解になります。
- 誤答として、内分泌ホルモン(インスリン、グルカゴン)や、他臓器のホルモン(グレリン=胃)が混ざっていることが多いです。
出題パターン注意!
- 単純知識問題(今回の問題)から、
状況設定問題への発展が予想されます。例えば、「急性膵炎の患者さんに、アミラーゼ値上昇と高血糖がみられた。この病態を説明できるのは、膵臓のどの機能が障害されたためか?」といった形で、外分泌障害と内分泌障害の合併を問う問題に発展します。