看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
救急外来に、顔面紅潮、激しい頭痛を訴え、少し混乱しているように見える48歳の男性が搬送されてきました。バイタルサインは血圧
230/125 mmHg、脈拍110回/分、呼吸数24回/分。家族から「最近、血圧の薬を飲み忘れていた」と情報を得ました。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
一次評価 (Primary Assessment):ABC(気道、呼吸、循環)を確認。同時に、
神経学的緊急評価を直ちに開始。GCS、瞳孔の大きさ・対光反射、四肢の動き、麻痺の有無を素早く評価・記録。
2.
安全確保とモニタリング:転落・痙攣に備え、ベッド柵を上げる。継続的な血圧モニタリング(できれば動脈ライン)と心電図モニタリングを開始。
3.
医師への報告と協働:神経学的所見を含む評価結果を迅速に医師に報告。降圧薬(例:ニカルジピン持続静注)の準備を進めながら、
投与開始後も神経学的所見を頻回に評価する。
4.
患者・家族へのケア:静かで刺激の少ない環境を整え、混乱している患者に落ち着いて声をかける。家族には状況をわかりやすく説明する。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
絶対に避けるべきこと:神経学的評価なしでの急速な降圧。経口降圧薬の投与(吸収が不安定で急激な降圧を招く恐れ)。患者を一人にしないこと。
看護処置と与薬フロー
| ステップ | 看護ケア | 根拠と注意点 |
|---|
| 1. 評価 | 神経学的評価 (GCS, 瞳孔, 麻痺)、バイタルサイン測定 | 治療のベースラインを確立。脳合併症の有無を判断。 |
| 2. 準備 | 静脈ライン確保(太い血管)、持続注入ポンプ、降圧薬の準備 | 確実な薬物投与経路の確保。用量調節が容易な持続静注が基本。 |
| 3. 実施 | 医師の指示に基づき降圧薬を開始。初回はゆっくりと。 | ここがポイント! 投与開始後5-10分ごとに血圧と神経症状を評価。目標は1時間で収縮期血圧を25%以内低下。 |
| 4. モニタリング | 血圧、神経症状を継続的に評価。副作用(頻脈、頭痛など)にも注意。 | 過度の降圧による脳虚血を防ぐ。治療効果と安全性の評価。 |
先輩看護師からの一言
「高血圧緊急症の患者さんは、『血圧が高いから下げる』という単純な思考では危険です。特に神経症状がある患者さんは、脳の血管が限界に近い状態。看護師の役割は、血圧計の数字を見るだけでなく、
患者さんの『脳』が今どうなっているかを、目の前の症状から読み取ることです。最初の神経学的評価が、その後の治療の全てを左右します。国試でも臨床でも、『症状から考える優先順位』を常に意識しましょう!」