看護学のコア解説
この問題は、
分布異常性ショック (Distributive shock)の患者において、看護師が最も優先的に継続モニタリングすべきアセスメント項目を問うています。ショック患者の管理では、
ABC(気道・呼吸・循環)の優先順位と、
組織灌流 (Tissue perfusion)の状態を評価することが基本です。
重要概念の分析 (Key Concept)
分布異常性ショックは、敗血症性ショック (Septic shock)、アナフィラキシーショック (Anaphylactic shock)、神経原性ショック (Neurogenic shock) などに代表される病態です。その本質は、
ここがポイント! 末梢血管の著しい拡張(血管抵抗の低下)により、
有効循環血液量 (Effective circulating blood volume)が相対的に不足し、血圧が低下することです。心拍出量は初期には正常か増加していることもありますが、血管が拡張しているため、組織への血液供給が不十分になります。したがって、
血圧、特に平均動脈圧 (Mean Arterial Pressure, MAP)は、組織灌流圧を直接反映する最も重要な指標となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解が②「血圧と平均動脈圧」である理由は、
ここがポイント! 分布異常性ショックの主要な病態生理が「血管拡張による血圧低下」であるためです。血圧(特に収縮期血圧)と、より重要な
平均動脈圧 (MAP)を継続的にモニタリングすることは、ショックの重症度、治療(輸液や昇圧薬)の効果、そして患者の生命予後を判断する上で不可欠です。MAPが
65 mmHg以上を維持することは、重要な臓器(脳、心臓、腎臓)への灌流を確保するための臨床目標となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 尿量(2時間ごと):尿量は
腎臓への灌流 (Renal perfusion)を評価する重要な指標であり、
0.5 mL/kg/hr以上が目標です。しかし、これは「継続的」モニタリングではなく、定期的な観察項目です。また、血圧が大きく低下すると尿量は減少するため、血圧管理が優先されます。
③ 酸素飽和度レベル:
SpO2 (経皮的動脈血酸素飽和度)は呼吸状態の評価に重要です。しかし、分布異常性ショックでは、初期の循環不全が主病態であり、SpO2は正常範囲を保っていることが多いです。また、末梢循環不全が高度になると、SpO2の測定値が不正確になる(偽低値)可能性があります。
④ グラスゴー・コーマ・スケールを用いた意識レベル:意識レベルは
脳への灌流 (Cerebral perfusion)を評価する重要な指標です。しかし、意識レベルの変化は血圧低下の「結果」として現れることが多く、継続的な血圧モニタリングによって悪化を「予測・予防」する方が、より優先度の高い看護介入と言えます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ショックの種類によって、優先すべきモニタリングの重点は異なります。
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循環血液量減少性ショック (Hypovolemic shock):心拍数、血圧、中心静脈圧 (CVP) のモニタリングが重要。
-
心原性ショック (Cardiogenic shock):血圧、心拍出量、肺動脈楔入圧 (PAWP) などの心機能パラメータが重要。
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閉塞性ショック (Obstructive shock)(心タンポナーデなど):血圧、心音、頸静脈怒張が重要。
概念のまとめ
分布異常性ショックの管理では、「血管が拡張して血圧が保てない」という病態を常に念頭に置き、
血圧(特に平均動脈圧)の継続モニタリングが最優先です。これは、他の臓器機能(尿量、意識レベル)を維持するための前提条件となります。
一目で比較!
| ショックの種類 | 主要病態 | 優先モニタリング項目 |
|---|
| 分布異常性ショック | 末梢血管抵抗の著明な低下(血管拡張) | 血圧・平均動脈圧 (MAP) |
| 循環血液量減少性ショック | 絶対的循環血液量の不足 | 心拍数、血圧、中心静脈圧 (CVP) |
| 心原性ショック | 心ポンプ機能の低下 | 血圧、心拍出量、肺動脈楔入圧 (PAWP) |
解剖生理と薬理のポイント
平均動脈圧 (MAP)は、
拡張期血圧 + (収縮期血圧 - 拡張期血圧) / 3 で概算されます。これは心周期全体を通じた平均的な圧力を表し、臓器灌流圧に直結します。分布異常性ショックの治療では、
ノルアドレナリン (Noradrenaline)などの
血管収縮薬 (Vasopressor)が第一選択となることが多く、その投与目標はMAPを
65 mmHg以上に維持することです。
暗記のコツとゴロ合わせ
「
分布(ブ)ショックは、血管がブワーっと開く。だから血圧が下がる。血圧を見よ!」とイメージしましょう。分布異常性ショックの核心は「血管拡張→血圧低下」です。
国試頻出ポイント
ショック患者の看護では、「どのタイプのショックか」を鑑別し、その病態に応じた「最優先の観察項目」と「最優先の看護ケア」を選択できるかが問われます。分布異常性ショックでは、
血圧・MAPの継続モニタリングと、昇圧薬投与の管理が頻出です。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「分布異常性ショック」でも、「観察項目」を問う問題から、「与薬中の看護師の行動(例:ノルアドレナリン投与中に漏出に注意する)」や、「患者家族への説明(昇圧薬が必要な理由)」など、より実践的な看護場面を想定した出題に変化する傾向があります。