看護学のコア解説
この問題は、
心原性ショック (Cardiogenic shock)の患者に対する
最優先の看護介入 (Priority nursing intervention)を問うています。心原性ショックは、心筋のポンプ機能が著しく低下し、全身への血液供給が不十分になる致命的な状態です。特に急性心筋梗塞後の患者では、壊死した心筋が収縮力を失い、
心拍出量 (Cardiac output)が急激に低下します。
重要概念の分析 (Key Concept)
問題の核心は「心原性ショックにおける治療の優先順位」です。心原性ショックの病態生理は「ポンプの故障」です。心臓が十分な血液を送り出せないため、血圧低下、頻脈、
乏尿 (Oliguria)(尿量
30 mL/hr)などの臓器灌流不全の症状が現れます。治療のゴールは、低下した心機能を補助し、
冠動脈灌流 (Coronary perfusion)を改善して壊死を最小限に抑え、全身の臓器灌流を回復させることです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の②「大動脈内バルーンパンピング (IABP) の準備」が最優先となる理由は、それが根本的な病態である「ポンプ機能の低下」に対する直接的な循環補助装置だからです。
ここがポイント! IABPは、大動脈に挿入したバルーンを心臓の拡張期に膨らませて冠動脈への血流を増やし、収縮期にしぼませることで心臓の後負荷を軽減します。これにより、
心筋の酸素需要を減らし、酸素供給を増やす (Decrease myocardial oxygen demand and increase supply)という二重の効果があり、急性心筋梗塞後の心原性ショックにおける重要な治療オプションです。看護師は、医師の指示に基づき、迅速に挿入準備(同意取得、機器・薬剤の準備、モニタリング体制の整備など)を行うことが求められます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「急速な生理食塩水500mLのボーラス投与」:これは
循環血液量減少性ショック (Hypovolemic shock)の第一選択治療です。心原性ショックでは、心臓の前負荷(血液量)が既に高いか正常であることが多く、急速な輸液は
肺水腫 (Pulmonary edema)を悪化させる危険があります。
③「酸素100%非再呼吸マスクによる酸素投与の増量」:酸素投与は重要ですが、これだけでは根本的なポンプ機能不全は解決しません。通常、ショック状態では既に高濃度酸素が投与されています。優先度は循環補助よりも低くなります。
④「フロセミド40mgの静脈内投与(尿量改善のため)」:これは完全に逆効果です。フロセミドは利尿薬であり、循環血液量を減少させ、血圧をさらに低下させる可能性があります。心原性ショックにおける乏尿は、腎臓への血流不足(灌流不全)が原因であり、利尿薬で解決する問題ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ショックの種類と初期対応は国試の超頻出テーマです。心原性ショックの治療は「心臓を休ませ、助ける」が基本です。薬物療法では、
カテコラミン (Catecholamine)(ドパミン、ドブタミンなど)を用いて心収縮力を高めますが、IABPのような機械的補助がより効果的な場合があります。
概念のまとめ
・心原性ショック:心ポンプ機能の著明な低下による臓器灌流不全。
・症状:低血圧、頻脈、意識障害、乏尿、四肢冷感。
・治療の柱:循環補助(IABPなど)、強心薬、原因治療(冠動脈インターベンションなど)。
・看護の優先度:ABC(気道、呼吸、循環)の確保。特に循環補助とモニタリングが最優先。
一目で比較!
| ショックの種類 | 主な原因 | 初期治療の原則 | 看護介入のポイント |
|---|
| 心原性ショック (Cardiogenic) | 心筋梗塞、心筋症 | 循環補助、強心薬、原因治療 | IABP準備、厳重なバイタル・尿量モニタリング、輸液速度管理 |
| 循環血液量減少性ショック (Hypovolemic) | 出血、脱水 | 急速輸液、出血源のコントロール | 急速輸液、出血量のアセスメント、ショック体位 |
| 敗血症性ショック (Septic) | 感染症 | 抗菌薬、輸液、昇圧薬 | 感染源対策、広域抗菌薬の迅速投与、体温管理 |
| 神経原性ショック (Neurogenic) | 脊髄損傷 | 輸液、昇圧薬 | 除脈・低血圧への注意、体位性低血圧予防 |
解剖生理と薬理のポイント
・
心拍出量 (CO) = 心拍数 (HR) × 1回拍出量 (SV):心原性ショックではSVが激減するため、代償的にHRが上昇(本例では118回/分)。
・
平均動脈圧 (MAP) = 心拍出量 (CO) × 全身血管抵抗 (SVR):CO低下がMAP低下の主因。
・IABPの作用機序:
拡張期増圧で冠血流↑、
収縮期減圧で後負荷↓→心仕事量↓。
・フロセミド:
ループ利尿薬 (Loop diuretic)。ヘンレループでのNa再吸収を阻害し、利尿。心不全のうっ血症状緩和には使うが、ショック時は禁忌に近い。
暗記のコツとゴロ合わせ
・ショックの優先順位は「
原因治療が
最優先」→「
ゲンサイ(原最)」。心原性なら心臓を助ける治療(IABP)、出血性なら輸血・止血が「原因治療」です。
・心原性ショックで輸液ボーラスはダメ!→「
心がポンプ故障なのに、水(輸液)をガンガン入れたらあふれる(肺水腫)」とイメージ。
国試頻出ポイント
心原性ショックは、急性心筋梗塞の合併症として、またはその治療(IABP、PCPS)として非常に頻出です。「バイタルサインと尿量の数値からショック状態を判断し、適切な看護介入を選択する」パターンが典型的です。尿量
30 mL/hrは臓器灌流不全の重要な指標です。
国試出題パターンの変化に注意!
かつては「心原性ショックの症状は?」という知識問題が多かったですが、現在は「この患者データから、看護師が最初に取るべき行動は?」という
臨床判断力を問う問題が主流です。単にIABPを知っているだけでなく、「なぜ他の選択肢(輸液、利尿薬)が危険なのか」という
根拠に基づいた看護判断 (EBN)が求められます。