看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
30歳の関節リウマチ患者。長期間のイブプロフェン服用歴があり、「みぞおちが焼けるように痛く、特に食事の後がつらい」と訴えて外来を受診。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント (Assessment):痛みのPQRST(部位、性質、強度、関連症状、時間)を詳細に聴取。服薬歴(NSAIDsの種類、用量、期間)を確認。吐血や黒色便(タール便)の有無を確認し、
上部消化管出血 (Upper GI bleeding)のリスクを評価します。
2.
看護診断 (Nursing Diagnosis):
疼痛 (Acute Pain)、
栄養摂取不足のリスク (Risk for Imbalanced Nutrition: Less Than Body Requirements)、
医薬品の有害作用のリスク (Risk for Adverse Reaction to Ibuprofen)などが考えられます。
3.
計画と実施 (Planning & Implementation):
- 医師の指示により、胃粘膜保護薬(プロトンポンプ阻害薬など)の服薬指導を行います。
- 疼痛管理:NSAIDsの継続が必要か医師と相談し、可能であれば胃に優しい鎮痛剤への変更を提案します。腹部を温めるなどの非薬物的ケアも提供します。
- 食事指導:香辛料やカフェイン、アルコールなど胃を刺激する食品を避け、消化の良いものを少量ずつ頻回に摂取するよう指導します。
4.
評価 (Evaluation):疼痛の軽減、安全な鎮痛法の継続、適切な栄養摂取ができているかを評価します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
NSAIDsの長期使用患者では、
ここがポイント! 無症候性の消化管出血や貧血のリスクがあります。定期的な
便潜血検査 (Fecal occult blood test)と
血液検査(ヘモグロビン、ヘマトクリット)のモニタリングが重要です。突然の激痛や冷汗、血圧低下は
胃穿孔 (Gastric perforation)の可能性があり、緊急事態です。
概念のまとめ
・胃炎の痛み:
心窩部、
食後増悪。
・NSAIDsの作用:胃粘膜保護因子(プロスタグランジン)を抑制→粘膜防御能低下→胃炎・潰瘍のリスク上昇。
・鑑別が重要な他疾患:虫垂炎(右下腹部痛)、胆道疾患(黄疸)、頭蓋内圧亢進(噴射性嘔吐)。
一目で比較!
| 疾患 | 痛みの特徴 | 主な原因/メカニズム |
|---|
| 胃炎 (Gastritis) | 心窩部痛、食後増悪 | NSAIDs、ピロリ菌、ストレスによる粘膜炎症 |
| 胃潰瘍 (Gastric ulcer) | 心窩部痛、食後30分~1時間で増悪 | 粘膜防御能の低下(胃炎より深い組織欠損) |
| 十二指腸潰瘍 (Duodenal ulcer) | 心窩部痛、空腹時・夜間に増悪、食事で軽快 | 胃酸分泌過多 |
| 虫垂炎 (Appendicitis) | 初期は心窩部痛、後に右下腹部に限局・持続痛 | 虫垂の閉塞と細菌感染 |
解剖生理と薬理のポイント
・胃の解剖:噴門、胃底、胃体、幽門。痛みを感じる部位は主に胃体部(心窩部)。
・胃酸分泌:食事(特にタンパク質)が刺激となり、ガストリンなどのホルモンや迷走神経を介して分泌が促進される。
・NSAIDsの薬理:シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、炎症物質(プロスタグランジン)の産生を抑制。COX-1は胃粘膜保護に関与するため、その抑制が胃障害の原因となる。
暗記のコツとゴロ合わせ
・胃炎の痛み:「
食った後が辛い(ツライ)胃炎」→ 食後増悪。
・NSAIDsの副作用:「
NSAIDsで胃がスカスカ」→ 胃粘膜障害を連想。
国試頻出ポイント
胃炎・胃潰瘍の症状(痛みのパターン)、NSAIDsの副作用、ヘリコバクター・ピロリ菌の関与は超頻出です。症状から疾患を鑑別する問題や、患者指導(食事、服薬)を問う問題も多いです。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「胃炎の症状は?」と問うだけでなく、「NSAIDsを服用している患者のアセスメントで最も注意すべき症状は?」「胃炎患者への食事指導で適切なのは?」など、
病態と薬理、看護ケアを結びつけた応用問題として出題される傾向が強まっています。