看護学のコア解説
この問題は、
クローン病 (Crohn's disease)に伴う吸収不良と、それに起因する特徴的な
ビタミンB12欠乏症 (Vitamin B12 deficiency)の臨床症状について問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)
クローン病は、口腔から肛門までの消化管のどの部位にも起こりうる、非連続性の全層性炎症です。特に回腸末端が好発部位であり、ここは
ビタミンB12の吸収部位です。長期にわたる炎症や外科的切除により、回腸末端の機能が障害されると、ビタミンB12の吸収が著しく低下します。その結果、
巨赤芽球性貧血 (Megaloblastic anemia)や神経症状を引き起こします。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血では、赤血球の産生が障害され、
貧血 (Anemia)が生じます。これにより、
結膜蒼白 (Pale conjunctiva)が観察されます。また、ビタミンB12は舌の粘膜細胞の再生にも関与するため、欠乏すると
舌炎 (Glossitis)を起こし、舌乳頭が萎縮して表面が滑らかで赤く見える
平滑舌 (Smooth, red tongue)が特徴です。したがって、選択肢②「結膜蒼白と平滑で赤い舌」が、クローン病に最も特徴的に予測される栄養欠乏(ビタミンB12欠乏)の所見となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ① 爪がもろい、脱毛:これは主に
鉄欠乏性貧血 (Iron deficiency anemia)で見られる所見です。クローン病でも慢性出血による鉄欠乏は起こり得ますが、問題文は「最も特徴的」と問うており、回腸末端障害に起因するビタミンB12欠乏が優先されます。
③ 乾燥した鱗屑状の皮膚、夜盲症:これは
ビタミンA欠乏症 (Vitamin A deficiency)の特徴です。脂溶性ビタミン(A, D, E, K)の吸収障害もクローン病では起こり得ますが、ビタミンB12欠乏ほど特異的ではありません。
④ 筋痙攣、骨痛:これは主に
カルシウム (Calcium)や
ビタミンD欠乏症 (Vitamin D deficiency)に関連し、骨軟化症や骨粗鬆症を引き起こします。小腸の広範な病変や脂肪吸収障害で生じることがあります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
クローン病では、病変部位によって欠乏する栄養素が異なります。小腸上部(空腸)が障害されると、鉄、葉酸の吸収障害が、回腸末端が障害されるとビタミンB12と胆汁酸の吸収障害が生じます。また、広範な小腸病変や大腸病変では、水分・電解質の吸収障害による下痢が持続します。
概念のまとめ
| 疾患 | 主な病変部位 | 特徴的な栄養吸収障害 | 臨床所見 |
|---|
| クローン病 | 回腸末端(好発) | ビタミンB12 | 巨赤芽球性貧血、平滑舌、神経症状(しびれ、歩行障害) |
| クローン病 | 小腸広範 | 脂溶性ビタミン(A,D,E,K)、電解質 | 夜盲症、骨痛、出血傾向 |
| 潰瘍性大腸炎 | 大腸(直腸から連続) | 鉄(慢性出血による) | 鉄欠乏性貧血(爪の変形、氷食症) |
一目で比較!
| 貧血の種類 | 原因栄養素 | 特徴的な身体所見 | その他の症状 |
|---|
| 巨赤芽球性貧血 | ビタミンB12、葉酸 | 平滑で赤い舌(舌炎)、結膜蒼白、軽度の黄疸(レモン色) | 末梢神経障害(しびれ、感覚異常)、歩行失調 |
| 鉄欠乏性貧血 | 鉄 | 匙状爪(スプーンネイル)、口角炎、氷食症 | 易疲労感、動悸、息切れ |
解剖生理と薬理のポイント
ビタミンB12の吸収には、胃で分泌される内因子 (Intrinsic factor) と結合し、回腸末端の受容体で吸収されるという複雑な過程が必要です。クローン病では回腸末端の病変が、悪性貧血では内因子の欠乏が吸収障害の原因となります。治療としてビタミンB12製剤の筋肉内注射が行われます(経口吸収が期待できないため)。
暗記のコツとゴロ合わせ
「
回腸末端でB12吸収、障害されれば貧血と舌がツルツル」
クローン病の好発部位「回腸末端」と、そこで吸収される「ビタミンB12」、欠乏症状の「貧血(巨赤芽球性)」と「平滑舌」をセットで覚えましょう。
国試頻出ポイント
炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)は、病態・症状・合併症・看護ケアと多角的に出題されます。特に「クローン病 vs 潰瘍性大腸炎」の鑑別表は必須です。栄養障害に関しては、
病変部位と欠乏する栄養素の関連を理解しておくことが高得点の鍵です。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「クローン病で欠乏しやすいのは?」と問うだけでなく、
「患者の訴え(しびれ、歩行不安定)から、どの栄養素欠乏を疑うか?」や、
「ビタミンB12補充療法の看護(筋注の実施、効果の評価指標)」など、臨床応用を問う形で出題される傾向があります。