看護学のコア解説
この問題は、
多発性骨髄腫 (Multiple myeloma)の患者さんに対する、
骨病変に伴う合併症予防を目的とした看護介入の優先順位を問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)
多発性骨髄腫は、形質細胞(抗体を産生する白血球)のがんです。この異常な形質細胞が骨髄内で増殖し、
ここがポイント! 骨吸収を促進する物質(サイトカイン)を放出します。その結果、
骨溶解 (Osteolysis)が起こり、骨がもろくなります(病的骨折のリスク上昇)。また、骨からカルシウムが血液中に溶け出すため、
高カルシウム血症 (Hypercalcemia)を引き起こし、腎機能障害や意識障害の原因にもなります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢③「転倒予防対策を実施し、歩行を介助する」が正解です。骨が脆弱な状態では、軽微な転倒や外力でも
病的骨折 (Pathological fracture)を起こす危険性が非常に高くなります。骨折は患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させ、疼痛管理やさらなる不動化による合併症(褥瘡、深部静脈血栓症など)を招きます。したがって、
安全な環境の整備と活動の介助は、最も重要かつ優先度の高い看護介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「骨を強化するために高負荷の運動を促す」:骨粗鬆症の予防では適切な運動が推奨されますが、多発性骨髄腫では骨が溶けてもろくなっている状態です。高負荷の運動は骨折のリスクを高めるため、禁忌です。
②「血清カルシウム値をモニタリングせずにカルシウムサプリメントを投与する」:多発性骨髄腫では骨溶解により高カルシウム血症を起こしやすいため、カルシウム補充は原則禁忌です。投与する場合は厳重なモニタリングが必要であり、この選択肢は危険です。
④「腎臓への負荷を防ぐために水分摂取を制限する」:
逆です! 多発性骨髄腫では、異常な免疫グロブリン(M蛋白)や高カルシウム血症が原因で
腎不全 (Renal failure)を合併しやすいです。その予防のためには、
十分な水分摂取を促し、M蛋白やカルシウムの排泄を促すことが重要です。水分制限は腎機能を悪化させる可能性があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
多発性骨髄腫の「CRAB症状」を覚えておきましょう。これは治療開始の基準となる重要な症状です。
・
C:
高カルシウム血症 (Hypercalcemia)
・
R:
腎機能障害 (Renal insufficiency)
・
A:
貧血 (Anemia)(骨髄での造血が妨げられるため)
・
B:
骨病変 (Bone lesions)(疼痛、骨折)
看護ケアは、これらの症状すべてをアセスメントし、予防・軽減する方向で計画されます。
概念のまとめ
・多発性骨髄腫の本質:骨髄での形質細胞の癌化→骨溶解・腎障害・貧血。
・骨病変による最大のリスク:病的骨折。
・最優先の看護介入:
転倒・骨折の予防(安全な環境、歩行介助、疼痛緩和による活動性維持)。
・禁忌・注意点:高負荷運動、無監視下のカルシウム補充、水分制限。
一目で比較!
| 疾患 | 骨への影響 | 看護介入のポイント |
|---|
| 多発性骨髄腫 (Multiple myeloma) | 骨溶解(骨が溶ける) 病的骨折リスクが極めて高い | 転倒予防が最優先 安全な環境整備と歩行介助 |
| 骨粗鬆症 (Osteoporosis) | 骨密度低下(骨がスカスカになる) 骨折リスクが高い | 転倒予防 + 適度な荷重運動と栄養指導(カルシウム、ビタミンD) |
解剖生理と薬理のポイント
・骨溶解のメカニズム:腫瘍化した形質細胞→RANKリガンドなどのサイトカイン放出→破骨細胞活性化→骨吸収促進。
・治療薬の例:
ボルテゾミブ (Bortezomib)(プロテアソーム阻害薬)、
レナリドミド (Lenalidomide)(免疫調節薬)。
ここがポイント! これらの薬物療法自体も、末梢神経障害(ボルテゾミブ)や深部静脈血栓症(レナリドミド)などの副作用により、転倒リスクを間接的に高める可能性があります。薬物療法と安全ケアは常にセットで考えます。
暗記のコツとゴロ合わせ
・「
骨が溶けるから、転ばせない!」:多発性骨髄腫の本質(骨溶解)と最優先ケア(転倒予防)を結びつけます。
・「CRAB(カニ)症状」:治療開始の基準。カニのように骨(B)をはさみ(C:Ca、R:腎臓、A:貧血)で攻撃する、とイメージ。
国試頻出ポイント
多発性骨髄腫は、
「骨病変」「腎障害」「高カルシウム血症」の3点セットと、それに基づく看護(転倒予防、水分摂取促進、腎機能モニタリング)が頻出です。「最も優先すべき看護」を問う問題が多いです。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「症状は?」と問う問題から、「この症状を有する患者に対して、看護師が最初に行うべき/最も優先すべきケアは?」という、
アセスメントに基づく介入の優先順位決定問題へと変化しています。常に「患者の安全(骨折予防、窒息予防など)」が最優先であることを念頭に置きましょう。