看護学のコア解説
この問題は、
筋骨格系損傷 (Musculoskeletal injury)のアセスメントにおいて、
筋挫傷 (Muscle strain)と他のより重度の損傷(骨折、完全断裂など)を鑑別する能力を問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)
筋挫傷 (Muscle strain)は、筋肉やそれを包む筋膜が過度に伸ばされたり、部分的に断裂したりする損傷です。一般的に「肉離れ」と呼ばれます。原因は、急激な収縮、過度の伸張、または疲労です。臨床的特徴は、
損傷部位の限局性の痛み、圧痛、腫脹、そして自動運動や抵抗運動による痛みによる可動域制限です。多くの場合、機能は完全には失われません。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解である選択肢②「限局性の筋痛と可動域制限」は、筋挫傷の典型的な所見です。患者は損傷した筋肉を動かしたり、伸ばしたりすると痛みを感じるため、自然と動きを制限します。この症例では、重い箱を持ち上げたという
過負荷の機転と、突然の腰痛発症が筋挫傷の病歴として合致します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「腫脹を伴う明らかな骨変形」:これは
骨折 (Fracture)や
脱臼 (Dislocation)を示唆する所見です。筋挫傷では骨の変形は見られません。
混同注意! ③「患部の完全な感覚消失」:これは神経損傷(例:脊髄損傷、末梢神経の重度の圧迫や断裂)を示唆する重篤な所見です。筋挫傷単独では通常、感覚神経は保たれます。
混同注意! ④「筋肉に触知可能な隙間と機能の完全喪失」:これは
筋断裂 (Muscle rupture)または
腱断裂 (Tendon rupture)を示す所見です。筋挫傷よりもはるかに重度の損傷で、筋肉の連続性が失われ、収縮機能が完全に失われることがあります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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捻挫 (Sprain):靭帯の損傷。関節の不安定性や特定方向への動きで痛みが増強するのが特徴です。
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RICE処置 (Rest, Ice, Compression, Elevation):急性期の筋挫傷・捻挫に対する基本の初期対応です。
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フィジカルアセスメント (Physical assessment):視診、触診(圧痛、熱感、変形)、関節可動域(ROM)、神経学的検査(感覚、運動)を系統的に行います。
概念のまとめ
筋挫傷:筋・筋膜の過伸展/部分断裂 → 限局痛、圧痛、腫脹、可動域制限。
骨折/脱臼:骨変形、異常可動性、軋轢音。
神経損傷:感覚障害、運動麻痺。
完全断裂:触知可能な欠損、機能完全喪失。
一目で比較!
| 損傷タイプ | 定義 | 主なアセスメント所見 |
|---|
| 筋挫傷 (Strain) | 筋肉・筋膜の損傷 | 限局痛、圧痛、腫脹、可動域制限 |
| 捻挫 (Sprain) | 靭帯の損傷 | 関節痛、腫脹、圧痛、関節不安定性 |
| 骨折 (Fracture) | 骨の連続性の断絶 | 変形、異常可動性、軋轢音、機能喪失 |
| 脱臼 (Dislocation) | 関節面の完全な離開 | 関節変形、弾発性固定、疼痛、腫脹 |
解剖生理と薬理のポイント
筋肉は収縮性組織です。過負荷がかかると、筋線維や周囲の結合組織(筋膜)が損傷し、炎症反応(発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能障害)が起こります。疼痛管理には
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)が用いられることが多く、炎症と疼痛を軽減します。
暗記のコツとゴロ合わせ
「
筋の
挫傷は、
痛くて
動けない」→ 筋挫傷の主症状は「痛み(疼痛)」と「動きの制限(可動域制限)」と結びつけましょう。
国試頻出ポイント
筋骨格系損傷の鑑別は頻出です。各損傷の定義と特徴的な身体所見をセットで覚えることが必須です。特に「筋挫傷 vs 捻挫」「骨折の確実な所見(異常可動性、軋轢音)」は何度も出題されています。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な症状の選択から、「この所見から考えられる損傷はどれか」という鑑別問題、さらには「受傷直後に看護師が行うべき優先度の高い対応はどれか(例:RICE処置の実施、神経血管症状のチェック)」といった看護介入を問う問題へと発展しています。