看護学のコア解説
重要概念の分析 (Key Concept)
この問題は、
伝音難聴 (Conductive hearing loss)と
感音難聴 (Sensorineural hearing loss)の鑑別を問うています。伝音難聴は、外耳や中耳の障害により音が内耳にうまく伝わらない状態です。一方、感音難聴は内耳(蝸牛)や聴神経の障害により、音の受容や神経伝達がうまくいかない状態です。この違いを理解するために、
ウェーバー検査 (Weber test)と
リンネ検査 (Rinne test)という2つの基本的な聴力スクリーニング検査の結果の解釈が重要になります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 選択肢③「検査者が背後に立ってささやき声を発した時は聞こえるが、通常の会話を聞くのは困難である」が伝音難聴を示唆する理由は、
骨導聴力 (Bone conduction)が保たれているからです。ささやき声は高周波音を含み、骨導を介して比較的よく伝わります。一方、通常の会話はより複雑な音であり、伝音系(気導)の障害の影響を強く受けます。この「骨導は保たれているが気導が低下している」という非対称性が、伝音難聴の本質です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「高音が低音よりよく聞こえる」:これは一般的に感音難聴の特徴です。内耳の有毛細胞は高音を感知する部分が障害を受けやすいためです。伝音難聴では、低音の聞き取りが悪くなる傾向があります。
②「ウェーバー検査で骨導が気導より大きい」:ウェーバー検査は音叉を前額中央に当て、どちらの耳に大きく聞こえるかを調べます。伝音難聴がある側の耳では、骨導音が相対的に大きく聞こえます(患側に偏る)。しかし、この選択肢の「骨導が気導より大きい」という表現は、リンネ検査の結果を説明するものであり、ウェーバー検査の記述としては不正確です。
④「リンネ検査で骨導と気導が等しい」:リンネ検査は正常では気導>骨導(AC > BC)です。骨導=気導(AC = BC)または骨導>気導(BC > AC)は、伝音難聴を示唆します。しかし、「等しい」という結果は、完全な伝音難聴というよりは、混合性難聴や検査の解釈に迷うケースも考えられます。最も典型的で明確な伝音難聴の所見は「骨導>気導」です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
伝音難聴の原因には、
耳垢栓塞 (Cerumen impaction)、
中耳炎 (Otitis media)、
鼓膜穿孔 (Tympanic membrane perforation)、
耳硬化症 (Otosclerosis)などがあります。看護師として、難聴を訴える患者のアセスメントでは、耳痛、耳漏、耳鳴り、めまいの有無、服薬歴(アミノグリコシド系抗菌薬など)、騒音曝露歴なども併せて確認することが重要です。
概念のまとめ
| 難聴の種類 | 障害部位 | 特徴 | 代表的な原因 |
|---|
| 伝音難聴 (Conductive HL) | 外耳・中耳 | 骨導聴力は保たれる。低音域の聞き取りが悪化。リンネ検査:BC ≧ AC | 耳垢栓塞、中耳炎、鼓膜穿孔 |
| 感音難聴 (Sensorineural HL) | 内耳・聴神経 | 骨導・気導ともに低下。高音域の聞き取りが悪化。リンネ検査:AC > BC(但し両方短縮) | 加齢、騒音曝露、メニエール病、薬剤性 |
一目で比較!
| 検査 | 方法 | 正常所見 | 伝音難聴 | 感音難聴 |
|---|
| リンネ検査 (Rinne test) | 音叉を乳様突起(骨導)→耳孔前(気導) | 気導 > 骨導 (AC > BC) 「気導の方が長く聞こえる」 | 骨導 ≧ 気導 (BC ≧ AC) 「骨導の方が長い/同じ」 | 気導 > 骨導 (AC > BC) 但し、両方の聴取時間が短縮 |
| ウェーバー検査 (Weber test) | 音叉を前額中央 | 両耳に均等に聞こえる | 患側に偏って聞こえる (患側の骨導が相対的に優位) | 健側に偏って聞こえる (健側の内耳機能が優位) |
解剖生理と薬理のポイント
音は、
外耳道→鼓膜→耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)→卵円窓→内耳リンパ液→有毛細胞→聴神経の経路で伝わります。この経路のうち、卵円窓より前(外耳・中耳)の障害が伝音難聴、それ以降(内耳・神経)の障害が感音難聴です。骨導は、頭蓋骨の振動が直接内耳に伝わる経路であり、外耳・中耳をバイパスします。
暗記のコツとゴロ合わせ
- リンネ検査の解釈:「正常は気が骨より上(AC > BC)」「伝音は骨が気を逆転(BC > AC)」
- ウェーバー検査の解釈:「伝音は患側にウェー(Weber)」「感音は健側にウェー」
- 伝音難聴の原因は「外(外耳)・中(中耳)・固(耳硬化症)」と覚える。
国試頻出ポイント
難聴の種類と検査所見の組み合わせは頻出です。リンネ検査とウェーバー検査の結果を表にまとめて暗記し、どちらの検査が「比較」でどちらが「偏り」を見る検査なのかを混同しないようにしましょう。また、
老人性難聴 (Presbycusis)が高音域から始まる感音難聴であることも合わせて問われます。
国試出題パターンの変化に注意!
基本的な検査所見を問う問題から、「伝音難聴が疑われる患者に対して、看護師が最初に行うべきアセスメントは何か?」(例:外耳道の視診による耳垢の有無の確認)といった、看護実践に結びついた問題への変化にも対応できるようにしましょう。