看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
ICUで人工呼吸器管理中のCOVID-19肺炎患者。これまで安定していたが、朝の回診で体温37.8℃、SpO2が95%から88%に低下(FIO2 50%維持)。吸引時に黄色〜緑色の膿性痰を認める。迅速にアセスメントし、次の行動を決定します。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント: バイタルサイン(特に体温、呼吸数、SpO2)、人工呼吸器設定と患者の同調性、痰の性状・量・色、胸部聴診(新たなラ音の有無)、意識レベルを迅速に評価。
2.
優先介入: 無菌的に
気管吸引 (Endotracheal suctioning)を行い、
痰培養 (Sputum culture)用の検体を採取。検体ラベルに日時・検査名を明記。
3.
連絡・報告: 主治医またはオンコール医師に直ちに連絡。「VAP疑い」として、観察した臨床所見(バイタル、痰性状、SpO2低下)、採取した培養検体、および検査結果(白血球数、プロカルシトニン値)を構造化して報告。
4.
支持療法とモニタリング: 医師の指示を待つ間も、患者の安楽体位(頭部挙上)、必要に応じた安全範囲内での酸素濃度調整、頻回なバイタルサイン・SpO2モニタリングを継続。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
・ 痰培養採取時は、気管内チューブの先端付近の分泌物を採取するため、新しい吸引カテーテルを使用し、できるだけ深く挿入してから吸引を開始する(通常の吸引より少し長めに)。
・ 安易に鎮静剤を増量しない。疼痛や不安による頻呼吸・同調不良の原因を評価する。
・ 感染対策: VAPは
医療関連感染 (Healthcare-associated infection, HAI)です。標準予防策に加え、接触予防策を徹底し、器材の交差感染を防ぎます。
看護処置と与薬フロー
| ステップ | 看護アクション | 根拠・注意点 |
|---|
| 1. アセスメント | バイタル、SpO2、痰性状、呼吸音、意識レベルを評価 | 変化のベースラインとの比較が重要 |
| 2. 検体採取 | 無菌的気管吸引で痰培養検体を採取 | 抗菌薬投与前に採取することが理想 |
| 3. 報告 | 医師に「VAP疑い」で所見と採取済みを報告 | SBAR (Situation, Background, Assessment, Recommendation)形式が効果的 |
| 4. 医師指示待機中のケア | 安楽体位、安全な酸素補給、継続的モニタリング | 状態急変に備える |
| 5. 指示後のケア | 抗菌薬の準備・投与、副作用モニタリング | 投与時間厳守、アナフィラキシーに注意 |
先輩看護師からの一言
「人工呼吸器管理中の患者さんは、自分で『息苦しい』『熱がある』と訴えることができません。看護師の観察力が全てです。痰の色が変わった、少し熱っぽい、酸素が前より要る…これらの『ささいな変化』は、重大な感染症の最初のサインかもしれません。『おかしいな』と思ったら、迷わずアセスメントを深め、必要な検査を提案し、チームに報告しましょう。あなたの迅速な対応が、患者さんの命を救います!」