看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
12歳の男児、再生不良性貧血で入院。血液検査では、白血球数
1,200/μL(正常:4,000-9,000)、好中球数
500/μL以下(
好中球減少症 (Neutropenia))、ヘモグロビン
7.5 g/dL、血小板数
25,000/μL。微熱(37.8℃)があり、食欲不振。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント:バイタルサイン(特に体温)の頻回モニタリング。口腔内、皮膚、肛門周囲など感染の侵入口となりやすい部位の観察。出血斑や鼻出血の有無の確認。
2.
感染予防ケア:
厳重な無菌的予防策 (Strict neutropenic precautions)の徹底。すべての医療従事者・面会者への手洗い・手指消毒の徹底。病室は個室管理とし、感染者との接触を禁止。生もの(生野菜、刺身など)は与えない。口腔ケアを丁寧に行い、粘膜の損傷を防ぐ。
3.
患者・家族教育:感染予防の重要性と具体的な方法(手洗い、マスク着用、人混みを避けるなど)を説明。発熱や寒気などの感染初期症状をすぐに報告するよう指導する。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
• 体温上昇は感染の第一のサイン。直腸温測定は粘膜損傷と感染リスクがあるため、通常は腋窩温または耳温で測定する。
• 血小板減少があるため、採血後は十分な圧迫止血を行う。鋭利なものによる外傷を避ける。
• 貧血によるふらつきに注意し、転倒・転落予防策を講じる。
概念のまとめ
• 再生不良性貧血 = 骨髄機能不全 → 汎血球減少(白血球↓、赤血球↓、血小板↓)。
• 最優先合併症 =
好中球減少による感染症(生命の危機に直結)。
• 最優先看護介入 =
厳重な無菌的予防策(好中球減少時の予防策)の実施。
• その他の重要ケア = 出血予防(安静、観察)、貧血ケア(活動制限、酸素投与)。
一目で比較!
| 合併症 | 原因(血球減少) | 主な症状・リスク | 看護ケアの重点 |
|---|
| 感染症 | 白血球(好中球)減少 | 発熱、悪寒、局所の紅腫・疼痛、敗血症 | 最優先。無菌的予防策、隔離、モニタリング |
| 出血 | 血小板減少 | 点状出血、紫斑、鼻出血、歯肉出血、頭蓋内出血 | 安静、外傷予防、観察、血小板輸血準備 |
| 貧血症状 | 赤血球減少 | 易疲労感、蒼白、動悸、息切れ | 活動制限、酸素投与、輸血準備 |
解剖生理と薬理のポイント
•
骨髄 (Bone marrow):骨の中心にある造血組織。ここで造血幹細胞が増殖・分化し、すべての血球が作られる。
• 再生不良性貧血では、この造血幹細胞が何らかの原因(免疫性、特発性など)で傷害され、造血が著しく低下する。
• 治療:免疫抑制療法(シクロスポリンなど)、造血幹細胞移植。看護師はこれらの治療に伴う副作用(感染リスクの更なる増大など)にも注意する。
暗記のコツとゴロ合わせ
• 優先順位は「
感(感染)→ 出(出血)→ 貧(貧血)」と覚える!
• 再生不良性貧血の「三低」:
白血球低い、赤血球低い、血小板低い → 全部低いから「汎(広く全体の)血球減少」。
国試頻出ポイント
再生不良性貧血は、「汎血球減少をきたす疾患」として、他の貧血(鉄欠乏性貧血など)や白血病との鑑別で頻出です。看護師国家試験では、
「最も生命に危険を及ぼす合併症は何か」「その予防のために最優先で行う看護は何か」という形で、優先順位判断力を問う問題が非常に多いです。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「再生不良性貧血」でも、
• 基本パターン:上記のように「最優先の看護」を選択させる。
• 応用パターン:患者の症状(「38.5℃の発熱」など)を提示し、「看護師が最初に取るべき行動は?」と問う(答え:医師に報告し、感染症の検査・治療を開始する)。
• 小児看護の統合パターン:「発達段階に応じた感染予防の説明の仕方」を問うこともあります。