看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)あなたは呼吸器内科病棟の看護師です。COPDの既往があるAさん(65歳)が、咳嗽と息切れの増悪で入院し、ネーザルカニューラ2 L/minで酸素投与中です。ラウンド中に、Aさんがベッド上で落ち着きなく動き回り、「息が苦しい!なんとかして!」と怒りっぽく訴えているのに気づきました。すぐにバイタルサインとSpO2を測定すると、上記の値でした。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)1.
即時アセスメント:患者の側に留まり、落ち着いた声で話しかけながら、呼吸音、呼吸補助筋の使用、意識レベルを迅速に観察します。「今、とても苦しそうですね。一緒に対処しますので、ゆっくり呼吸をしてみましょう」と声をかけます。
2.
安全確保とエスカレーション:
酸素流量はそのままに、コールベルで同僚を呼び、直ちに主治医またはオンコール医師に連絡します。報告は「SBAR(状況-背景-評価-提案)」形式で行います。「S:COPD増悪のAさん、SpO2 88%、呼吸数28、不穏です。B:ネーザルカニューラ2L投与中。A:低酸素が持続・悪化している可能性があります。R:至急診察をお願いします」。
3.
医師の指示待ちと準備:医師到着まで患者を観察し続け、必要に応じて
動脈血液ガス分析 (ABG: Arterial Blood Gas analysis)の準備や、非侵襲的陽圧換気(NPPV)のセットアップを準備します。
4.
指示後のケア:医師の新たな指示(例:ABG採取、酸素療法の変更、薬剤追加)に基づき、適切なケアを実施します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)COPD患者への安易な高濃度酸素投与は「治療」ではなく「危険」であることを肝に銘じてください。不穏は苦痛のサインであり、鎮静剤の安易な使用は呼吸抑制を悪化させる可能性があります。まずは低酸素や高二酸化炭素血症の是正を図ります。
看護処置と与薬フロー
| 状況 | 看護師のアクション | 根拠・注意点 |
|---|
| COPD患者のSpO2低下 + 不穏 | 1. バイタル、呼吸状態、意識レベルを即時評価。 2. 現在の酸素流量を確認・維持。 3. 直ちに医師に報告(SBAR)。 | 自己判断での酸素増量は禁忌。状態悪化のサインは迅速なエスカレーションが必要。 |
| 医師からABG採取指示 | 1. 動脈穿刺の準備(ヘパリン入りシリンジなど)。 2. 穿刺部位(橈骨動脈など)の消毒、Allenテスト実施。 3. 検体の空気混入防止、直ちに分析へ。 | ABGは低酸素と高炭酸ガス血症の程度を正確に評価するゴールドスタンダード。 |
| NPPV(非侵襲的陽圧換気)開始指示 | 1. マスクのフィッティング、患者への説明。 2. 設定圧の確認、徐々に圧を上げて慣らす。 3. 顔面の褥瘡予防、呼気の結露管理。 | CO2ナルコーシスの回避・治療に有効。患者の不安軽減と協力を得ることが重要。 |
先輩看護師からの一言
「COPDの患者さんは『酸素が足りない苦しさ』と常に戦っています。私たち看護師の役割は、ただ酸素を送る機械ではなく、『その患者さんに合った、安全な酸素の量』を見極めるパートナーになることです。バイタルサインの数字だけでなく、患者さんの『様子』(不穏、表情、言葉)は、数値化できない最も重要なアラームです。国試でも臨床でも、『患者の状態が想定外に悪化している』と気づいたら、まず『報告・相談』。これがプロの看護師の第一歩です!」