看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
血液透析室で、68歳のCKD患者が「胸がなんとなくおかしい、ドキドキする」と訴え、少し元気がない様子です。バイタルサインは血圧低下傾向、脈拍は不整脈を疑わせます。直近の血液検査データを確認すると、カリウム値が上昇している可能性があります。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
即時のアセスメント: まず
ABCアセスメントを行います。特に
循環動態 (Circulatory status)に注目し、
心電図モニタを装着し、波形を確認します。尖鋭T波などの変化がないか注視します。
2.
緊急連絡と準備: 心電図変化や重度の高カリウム血症が疑われた場合、
直ちに医師に報告します。同時に、緊急透析や薬物治療(グルコン酸カルシウムの静注、インスリン+ブドウ糖の投与、ポリスチレンスルホン酸カルシウムなどの経口カリウム吸着剤など)の準備を開始します。
3.
安全確保: 患者を安静にさせ、モニタを継続します。不整脈が発生した場合に備えて、
除細動器 (Defibrillator)や
救急カート (Crash cart)がすぐに使える状態にあることを確認します。
4.
原因の探索と予防: 急性期対応後、なぜ高カリウム血症が生じたのかをアセスメントします(食事内容、内服薬、透析の adherence など)。患者・家族への食事指導(生野菜・果物・芋類の制限など)の再評価を行います。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
- 高カリウム血症の治療薬であるグルコン酸カルシウムを静注する際は、ゆっくりと投与し、血管外漏出に注意します(組織壊死のリスク)。
- インスリンとブドウ糖の投与時は、低血糖 (Hypoglycemia)のモニタリングを必ず行います。
- 透析患者への輸液は、循環血液量過負荷を招かないよう、速度と量を厳密に管理します。
看護処置と与薬フロー
高カリウム血症に対する緊急対応の流れ
1. モニター心電図の装着・波形確認 → 2. 医師への緊急報告 → 3. 医師の指示に基づき、心筋安定化のためグルコン酸カルシウムを静注(通常、数分かけてゆっくり) → 4. 細胞内へのカリウム移行を促すため、速効性インスリンとブドウ糖を静注(低血糖モニタリング必須) → 5. カリウム除去のため、緊急透析の準備または経口吸着剤の投与。
先輩看護師からの一言
「透析患者さんのカリウム管理は、まさに命綱です。検査データの数値だけでなく、『患者さんの訴え』と『心電図の波形』という目に見える・聞こえるサインを結びつけて考えることが、危機を未然に防ぐ看護師の勘どころです。『なんとなく元気がない』『胸が変』という訴えを聞いたら、まず心電図を見る!この習慣が、緊急事態から患者さんを守ります。」