看護学のコア解説
この問題は、
妊娠後期 (Third trimester)の妊婦健診における異常所見のアセスメントと、
優先度の高い看護判断 (Priority nursing judgment)を問うています。正常な妊娠経過と、
混同注意!「妊娠による生理的な変化」と「病的な徴候」を鑑別する能力が試されます。
重要概念の分析 (Key Concept)
問題の核は、
子宮底長 (Fundal height)の測定と、
胎動 (Fetal movement)の評価です。妊娠週数に応じた子宮底長は、胎児の発育と羊水量を間接的に評価する重要なスクリーニング指標です。通常、妊娠20週以降は、妊娠週数(週)と子宮底長(cm)がほぼ一致します(例:妊娠32週なら約30-32cm)。また、胎動は胎児の健康状態を反映する「バイタルサイン」です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 選択肢②「妊娠32週で子宮底長28cm、かつ胎動減少」は、
胎児発育遅延 (Fetal growth restriction, FGR)または
羊水過少症 (Oligohydramnios)を示唆する、
緊急性の高い所見です。
1.
子宮底長の不一致:妊娠32週で28cmは、週数より4cm小さいことを意味し、明らかな不一致です。これは胎児が十分に成長していない、または羊水量が少ない可能性を示します。
2.
胎動減少の合併:胎動減少は、胎児の健康状態が悪化している(胎児機能不全の可能性)ことを示す重要なサインです。この2つの所見が組み合わさることで、緊急性が大幅に高まります。直ちに超音波検査などによる詳細な評価が必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、妊娠後期によく見られる生理的変化であり、単独では緊急評価を要しません。
① 血圧110/70mmHg:これは正常範囲内の血圧です。妊娠高血圧症候群の診断には、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の高血圧が持続することが必要です。既往歴もないため、問題となる所見ではありません。
③ 両足関節の軽度の夕方の浮腫:これは
妊娠による生理的浮腫 (Physiological edema)です。子宮が下大静脈を圧迫することで静脈還流が妨げられ、またホルモンの影響で水分貯留が起こりやすくなります。顔面や手の浮腫、急激な体重増加を伴わない限り、通常は心配ありません。
④ 時々の胸やけと仰臥位での息切れ:これも妊娠後期の典型的な症状です。大きくなった子宮が横隔膜を押し上げ、胃や肺を圧迫することで生じます。
起座呼吸 (Orthopnea)に似ていますが、妊娠による生理的な変化の範囲内です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・
マクドナルド計測法 (McDonald's rule):恥骨結合上縁から子宮底までの長さ(子宮底長)を測定する方法。妊娠週数の簡易的な指標。
・NST (Non-stress test, ノンストレステスト):胎児の心拍数と胎動、子宮収縮の関係を評価する検査。胎動減少が認められた場合の第一選択となる検査です。
・妊娠高血圧症候群 (Hypertensive disorders of pregnancy):高血圧に加え、蛋白尿や臓器障害を伴う病態。選択肢①のような正常血圧では該当しません。
概念のまとめ
・緊急性が高い所見:子宮底長と妊娠週数の不一致(±2-3cm以上)+ 胎動減少。
・妊娠の生理的変化:軽度の末梢浮腫、消化器症状(胸やけ)、呼吸器症状(息切れ)。
一目で比較!
| 評価項目 | 正常/生理的所見 | 異常/病的所見(要評価) |
|---|
| 子宮底長 | 妊娠週数 ± 2-3cm | 妊娠週数より著明に小さいor大きい |
| 胎動 | 一定のパターンで感じられる | 明らかな減少または消失 |
| 浮腫 | 夕方の足関節の軽度浮腫 | 朝からの顔面・手の浮腫、急激な体重増加 |
| 血圧 | 120/80未満が理想 | 140/90以上が持続 |
解剖生理と薬理のポイント
妊娠後期には、子宮が著しく増大し、横隔膜を押し上げ(呼吸器症状)、下大静脈を圧迫し(浮腫、仰臥位低血圧症候群)、胃を圧迫します(消化器症状)。これらはすべて「子宮による機械的圧迫」が原因の生理的変化です。一方、胎児発育遅延は、胎盤機能不全などが原因で、胎児への酸素や栄養供給が不十分になる病態です。
暗記のコツとゴロ合わせ
「フンダン(フンダン長)動かない(胎動減少)は即アセスメント!」
子宮底長(フンダン長)の異常と胎動減少の組み合わせは、赤信号です。
国試頻出ポイント
「最も緊急性が高い」「優先して評価すべき」という問い方で、妊婦健診の所見から異常を選ばせる問題は超頻出です。胎動と子宮底長の組み合わせ、妊娠高血圧症候群の初期症状(高血圧・蛋白尿・浮腫)、前期破水などがよく出題されます。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「異常な所見はどれか」と問うだけでなく、「その所見に対して看護師が最初に行うべき行動は何か」(例:医師に報告する、NSTの準備をする、体位を変えて胎動をカウントさせる)といった、アセスメント後のアクションまで問う問題が増えています。