看護学のコア解説
この問題は、
レオポルド触診法 (Leopold's maneuvers)の手順と、その結果に基づく臨床判断について問うています。特に、第三段階で触知した所見から、次に行うべき適切な
看護アセスメント (Nursing assessment)を選択する能力が試されています。
重要概念の分析 (Key Concept)
レオポルド触診法は、妊婦の腹部を系統的に触診することで、
胎位 (Fetal position)、
胎向 (Fetal lie)、
先進部 (Presenting part)、
胎勢 (Fetal attitude)を評価する重要な産科診察技術です。4つの段階(第一〜第四)で構成され、各段階で得られる情報は次の段階の評価に繋がります。
問題文の「第三段階で、子宮下部に硬くて丸く、動く塊を触知した」という所見は、典型的に
胎児の頭部 (Fetal head)を示しています。子宮下部に頭部があるということは、
骨盤位 (Breech presentation)の可能性が高いことを意味します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は①「第四のレオポルド触診法を行い、胎児頭部の進入度を評価する」です。
ここがポイント! レオポルド触診法は、
4つの段階を順番に行うことで、胎位を総合的に判断する体系的なアセスメントです。第三段階で先進部が頭部である可能性が示唆された場合、次に行うべきは第四段階です。第四段階では、母体の恥骨結合に向かって両手を滑らせ、先進部(この場合は頭部)が骨盤内にどれだけ進入しているか(
進入度 (Engagement))、また頭部が屈曲しているか反屈しているかを評価します。これにより、骨盤位の種類(例えば、単臀位か全臀位か)や分娩経過の予測に役立つ情報が得られます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
②「子宮底長を測定して妊娠週数を確認する」:子宮底長測定は妊娠週数の確認には有用ですが、
レオポルド触診法という特定の診察手順の流れの中での「次の一手」としては不適切です。レオポルド触診は胎位の評価が目的であり、その評価を完了させることが優先されます。
③「臍の高さで胎児心音を聴取する」:
胎児心音聴取 (Fetal heart rate auscultation)の位置は、
胎児の背部に最も近い母体腹部で行うのが原則です。第三段階で頭部が子宮下部にある(骨盤位の可能性)と判断した場合、胎児の背部は通常、母体の上腹部に位置するため、臍の高さで聴取するのは適切ではありません。胎位評価が完了してから、適切な位置で聴取すべきです。
④「骨盤位と判断し、直ちに医師に報告する」:これは最も危険な誤答です。レオポルド触診法だけで骨盤位を「確定診断」し、直ちに報告するのは時期尚早です。看護師は、
第四段階を含む全段階の評価を完了させ、所見をまとめてから医師に報告するべきです。34週では胎位がまだ変わる可能性もあり、慌てた対応は妊婦に不必要な不安を与えかねません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
骨盤位 (Breech presentation)には、殿部だけが先進する「単臀位」、殿部と足が先進する「全臀位」、足が先進する「足位」などがあります。分娩時のリスク(臍帯脱出、胎児損傷など)が高いため、経腟分娩か帝王切開かの慎重な判断が必要です。34週では自然に頭位に回転する可能性も残っています。
概念のまとめ
レオポルド触診法は体系的手順。第三段階(子宮下部の先進部触知)で頭部を触知→骨盤位疑い。次の適切なアセスメントは、第四段階(先進部の進入度と屈曲度の評価)を行い、評価を完成させること。
一目で比較!
| レオポルド触診 段階 | 目的 | 方法・評価内容 |
|---|
| 第一段階 | 子宮底部にある胎児部分の確認 | 子宮底を触診。胎児の臀部(軟らかく不規則)or 頭部(硬く丸く動く)を区別。 |
| 第二段階 | 胎児の背部と小部分の位置確認 | 子宮の左右を触診。平坦な側が背部、小さい凹凸がある側が四肢側。 |
| 第三段階 | 先進部の確認と動きの評価 | 恥骨結合上部を把持。硬く丸い塊(頭部)or 軟らかく不規則な塊(臀部)。動くか固定化かも評価。 |
| 第四段階 | 先進部の進入度と屈曲度の評価 | 母体の骨盤側方から両手を滑らせ、先進部が骨盤内にどれだけ入っているか、頭部の屈曲状態を評価。 |
解剖生理と薬理のポイント
妊娠後期の子宮は、
卵円形です。胎児の頭部は骨が融合しておらず(泉門)、触診上「硬く丸い」と感じられます。一方、臀部は筋肉と脂肪で覆われており、「軟らかく不規則」な感触です。この触感の違いが、触診で胎児部分を識別する鍵となります。
暗記のコツとゴロ合わせ
レオポルド触診法の順番と目的は、以下のように整理できます。
「
一(いち)で底、二(に)で背中、三(さん)で先頭、四(し)で進入」
第一段階:子宮底(てい)を触る。
第二段階:胎児の背中(背中)の位置を確認。
第三段階:先進部(先頭)を確認。
第四段階:進入度を評価。
国試頻出ポイント
レオポルド触診法は、母性看護学の超頻出項目です。各段階の「目的」「方法」「得られる所見」「所見から推測できる胎位」をセットで覚えることが必須です。特に、第三・第四段階の組み合わせと、骨盤位の判断に関する問題が多く出題されます。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「第三段階で何を評価するか」を問う問題から、
「特定の所見を得た後、次に取るべき看護師の行動は何か」という、臨床判断力を試す応用問題へと変化しています。手順の暗記だけでなく、その結果をどう解釈し、次のケアにどう活かすのかという看護過程の流れを理解しておきましょう。