看護学のコア解説
この問題は、分娩進行の異常である
分娩停止 (Arrest of labor)、特に
活動期の遷延 (Prolonged active phase)と
二次的停止 (Secondary arrest)の鑑別と、看護師の適切な対応について問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)
分娩の進行は、潜伏期と活動期に分けられます。活動期は子宮口が4-6cm以上開大してから全開大(10cm)までの期間です。正常な初産婦では、活動期の子宮口開大速度は1.2cm/時間以上、経産婦では1.5cm/時間以上が一般的な目安です。問題のケースでは、39週の経産婦(multigravida)が活動期に入って14時間経過し、子宮口が6cmで4時間変化がないとされています。これは、十分な子宮収縮があるにもかかわらず子宮口開大が停止している状態であり、
二次的停止 (Secondary arrest of dilation)の定義に合致します。この状態は、
胎児骨盤不均衡 (Cephalopelvic disproportion: CPD)や
回旋異常 (Malposition)などが原因である可能性が高く、自然な分娩進行を期待するだけでは母児のリスク(感染、子宮破裂、胎児仮死など)が高まります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 分娩進行の異常が疑われる場合、看護師の最優先の役割は、正確な状況を
アセスメント (Assessment)し、
医師や助産師(医療提供者)に迅速に報告することです。選択肢②「医療提供者に子宮口開大の進展がないことを直ちに報告する」が正解です。医師/助産師は、超音波検査による胎児の位置・回旋の確認、骨盤計測、子宮収縮の質の再評価などを行い、
オキシトシン (Oxytocin)による陣痛促進、吸引/鉗子分娩、または帝王切開術など、医学的な介入の必要性を判断します。看護師は、この判断を支援するための正確な情報提供者であり、単独で分娩進行を促進する介入を継続すべきではありません。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 歩行の奨励:潜伏期や正常な活動期の初期には有効なケアですが、すでに「二次的停止」が疑われる段階では、根本的な原因(例:CPD)を解決せず、時間を浪費する可能性があります。
③ 体位変換の頻度増加:これも正常な分娩進行を助ける一般的な看護ケアです。しかし、本ケースのように明確な進行停止が認められる場合、これだけでは不十分であり、医療的判断が必要です。
④ 鎮痛薬の投与:疼痛管理は重要ですが、鎮静作用により子宮収縮が弱まるリスクもあり、進行停止の原因がCPDなどの場合には状況を悪化させる可能性があります。まずは医学的評価が優先されます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
分娩進行異常 (Abnormal labor progression)には以下の分類があります:
- 潜伏期の遷延 (Prolonged latent phase):陣痛開始から活動期開始までの時間が初産婦で20時間、経産婦で14時間を超える。
- 活動期の遷延 (Prolonged active phase):子宮口開大速度が初産婦で1.2cm/時間未満、経産婦で1.5cm/時間未満。
- 二次的停止 (Secondary arrest):活動期に入った後、子宮口開大が2時間以上完全に停止する(本ケースは4時間)。
- 下降停止 (Arrest of descent):子宮口全開大後、胎児の下降が1時間以上認められない。
概念のまとめ
| 用語 | 定義・ポイント |
|---|
| 二次的停止 (Secondary arrest) | 活動期に入り、子宮口開大が2時間以上進まない状態。医学的評価が必須。 |
| 看護師の役割 | 異常の早期発見、正確なアセスメント、タイムリーな医療提供者への報告。 |
| 分娩進行の正常値 | 活動期開大速度:初産婦≧1.2cm/時、経産婦≧1.5cm/時。 |
一目で比較!
| 状況 | 看護介入の焦点 | 理由 |
|---|
| 正常な分娩進行中 | 安楽な体位の工夫、歩行奨励、精神的サポート | 自然な進行を促進し、快適性を高める。 |
分娩進行の異常が疑われる時 (例:二次的停止) | 医師/助産師への即時報告 | 母児の安全確保のため、医学的判断と介入が必要。 |
解剖生理と薬理のポイント
分娩の進行には「
3つのP」が関与します:
娩出力 (Power: 子宮収縮)、
産道 (Passage: 骨産道・軟産道)、
娩出物 (Passenger: 胎児の大きさ・位置・姿勢)。二次的停止は、この3つのPのいずれか(多くはPassageとPassengerの不均衡)に問題があるサインです。オキシトシンはPowerを強化する薬剤ですが、CPDがある場合には禁忌となります。
暗記のコツとゴロ合わせ
「
二次停止は、医師ストップ!」:二次的停止が疑われたら、看護師だけで対処しようとせず、まず医師/助産師にストップをかけて(報告して)評価を仰ぐ、とイメージしましょう。
国試頻出ポイント
分娩進行異常は頻出テーマです。「時間」と「子宮口開大の数値」をセットで覚えることが重要です。特に「活動期に入ってから(4-6cm以降)の開大速度」と「二次的停止の定義(2時間以上の進行停止)」は必須知識です。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「二次的停止の定義は?」と問う問題から、本問のように「具体的な臨床シナリオの中で、看護師が取るべき
最優先の行動は?」と、看護判断力を問う問題へと変化しています。常に「患者の安全と、看護師の職責範囲」を考えて選択肢を選びましょう。