看護学のコア解説
この問題は、
分娩後 (Postpartum)の重要な合併症である
子宮弛緩 (Uterine atony)のアセスメント所見を問うています。子宮弛緩は
分娩後出血 (Postpartum hemorrhage)の最も一般的な原因であり、迅速な対応が求められます。
重要概念の分析 (Key Concept)
分娩後、子宮は収縮(子宮復古)によって胎盤剥離面の血管を圧迫し、出血を止めます。この収縮が不十分な状態が
子宮弛緩 (Uterine atony)です。弛緩した子宮は血管を圧迫できず、大量出血に至ります。アセスメントの鍵は、
ここがポイント! 子宮底の高さと硬さです。正常な子宮復古では、子宮底は分娩直後は臍の高さにあり、その後1日1横指(約1-2cm)ずつ下降し、硬く収縮しています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の③「子宮底が臍上3横指で、柔らかく/弛緩している」は、子宮弛緩の典型的かつ危険な所見です。臍上にあることは子宮が十分に収縮せず、血液や凝血塊で拡張していることを示し、「柔らかい/弛緩している」感触は収縮不全を直接的に証明します。これは
緊急介入が必要な所見です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①「子宮底が臍下2横指で、硬く触れる」:これは
正常な子宮復古 (Normal uterine involution)の経過を示す所見であり、問題はありません。
②「悪露(lochia rubra)に小さな凝血塊があり、軽度の後陣痛を訴える」:分娩後2-3日は悪露が赤色(lochia rubra)で少量の凝血塊が見られることがあり、後陣痛は子宮収縮の証拠です。これらは一般的な経過観察項目です。
④「中等度の疼痛(6/10)と乳房緊満感を訴える」:分娩後の疼痛管理は重要ですが、乳房緊満感は乳汁分泌開始に伴う生理的な変化であり、子宮弛緩の直接的な指標ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
分娩後出血の原因は「4つのT」で覚えます:
Tone (子宮弛緩)、
Trauma (産道損傷)、
Tissue (胎盤遺残)、
Thrombin (凝固障害)。この中で最も頻度が高いのがTone(子宮弛緩)です。看護師は、子宮底マッサージ、バイタルサインの頻回モニタリング、出血量の正確な測定、医師への迅速な報告などの介入を行います。
概念のまとめ
分娩後2時間の重要な観察ポイント:
子宮底の高さと硬さ、悪露の量と性状、バイタルサイン(特に脈拍と血圧)、自覚症状(疼痛、めまいなど)。子宮底が臍上にある、または柔らかい場合は直ちにアセスメントを強化し、介入が必要。
一目で比較!
| 所見 | 正常な子宮復古 | 子宮弛緩 (危険所見) |
|---|
| 子宮底の高さ | 分娩直後:臍高 その後:1日1横指ずつ下降 | 臍上にある、または下降しない |
| 子宮底の硬さ | 硬く収縮している(「こぶし大」の感触) | 柔らかい、弛緩している(「スポンジ状」) |
| 悪露の量 | 生理的な量(パッド交換頻度で判断) | 大量、凝血塊が多い、止まらない |
| 看護介入 | 経過観察、母子同室の促進、排尿促通 | 子宮底マッサージ、医師への緊急報告、輸液・薬剤準備 |
解剖生理と薬理のポイント
子宮筋はオキシトシン(Oxytocin)の作用で収縮します。分娩後は自然にオキシトシンが分泌され、また授乳刺激でも分泌が促進されます。子宮弛緩が疑われる場合、治療として合成オキシトシン製剤(ピトシンなど)の静脈内投与が第一選択となります。これは子宮筋を直接収縮させることで止血を図ります。
暗記のコツとゴロ合わせ
子宮弛緩の危険サインは「
高くて柔らかい」。子宮底が「
臍より上(高い)」で「
柔らかい」は即アラート!
分娩後出血の原因「4つのT」: Tone(弛緩)、Trauma(損傷)、Tissue(組織遺残)、Thrombin(血栓=凝固異常)。
国試頻出ポイント
分娩後出血と子宮弛緩は超頻出テーマです。子宮底の位置と硬さのアセスメント、正常な悪露の推移(lochia rubra → serosa → alba)、分娩後出血に対する看護介入(子宮底マッサージ、バイタルサイン測定、医師連絡)がセットで問われます。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「子宮弛緩の所見は?」と問うだけでなく、「その所見に対して看護師が最初に行うべき行動は?」「子宮底マッサージの正しい方法は?」「オキシトシン投与時の観察ポイントは?」など、アセスメントから具体的な介入・評価まで一連の看護過程として出題される傾向があります。