看護学のコア解説
この問題は、
産褥期 (Postpartum period)の合併症である
子宮内膜炎 (Endometritis)の特徴的な所見を問うています。分娩後、子宮内膜は大きな創傷面となります。細菌(主に膣や腸管の常在菌)が上行性に感染することで発症します。
重要概念の分析 (Key Concept)
子宮内膜炎 (Endometritis)は、分娩や流産後に子宮内膜に細菌感染が起こる状態です。発熱、悪寒、下腹部痛が主な全身症状ですが、
ここがポイント! 感染の局所徴候である
悪臭のある膿性の悪露 (Foul-smelling, purulent lochia)が最も特徴的で診断的な所見です。悪露の量が増加することもあります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は①「悪臭のある膿性の悪露、量の増加」です。これは子宮内の感染と炎症に直接起因する所見であり、子宮内膜炎を強く示唆します。正常な悪露は、時間の経過とともに色や性状が変化します(血性→漿液性→白色)が、悪臭はありません。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、異なる産褥期合併症を示しています。
② 乳房の圧痛、局所的な熱感と発赤:これは
乳腺炎 (Mastitis)や乳うっ滞を示唆します。
③ 腓腹筋の痛みと腫脹、ホーマンズ徴候陽性:これは
深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis: DVT)の可能性を示す所見です。
④ 会陰切開部位の軽度の発赤とわずかな離開:これは
会陰創部感染 (Perineal wound infection)を示唆しますが、通常は子宮内膜炎のような高熱や全身症状を伴いません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
子宮内膜炎のリスク因子には、
帝王切開 (Cesarean section)、
前期破水 (Premature rupture of membranes)、
遷延分娩 (Prolonged labor)、
内診の回数が多いことなどがあります。治療は抗菌薬の投与が中心です。
概念のまとめ
| 疾患 | 主な症状・所見 | 看護上のポイント |
|---|
| 子宮内膜炎 (Endometritis) | 発熱・悪寒・下腹部痛 + 悪臭のある膿性悪露 | 全身状態の観察、抗菌薬投与の管理、悪露の性状・量・臭いの観察 |
| 乳腺炎 (Mastitis) | 乳房の発赤・腫脹・熱感・圧痛、発熱 | 乳房マッサージ、搾乳の援助、安静、抗菌薬投与 |
| 深部静脈血栓症 (DVT) | 片側の下肢の疼痛・腫脹・発赤、ホーマンズ徴候 | 早期離床の促進、弾性ストッキングの使用、血栓予防の指導 |
| 会陰創部感染 (Perineal wound infection) | 創部の発赤・腫脹・熱感・排膿、縫合部の離開 | 清潔保持(洗浄・消毒)、坐浴の指導、創部ドレッシング |
解剖生理と薬理のポイント
分娩後、胎盤が剥離した子宮内膜は大きな創傷面となり、細菌感染のリスクが高まります。悪露はこの創傷からの分泌物、剥離膜、血液などの混合物です。正常でも細菌は存在しますが、免疫機能や子宮収縮による排出(後陣痛)により感染は防がれています。リスク因子があると、このバランスが崩れ感染が成立します。治療には、腣・腸管の常在菌(大腸菌、連鎖球菌、嫌気性菌など)をカバーする広域抗菌薬が使用されます。
暗記のコツとゴロ合わせ
子宮内膜炎の3大症状は「熱・寒・腹痛」。そして決定的な所見は「
臭い悪露」。他の合併症と混同しないように、「乳房は乳腺炎」「足は血栓」「お尻は創感染」と部位で覚えると整理しやすいです。
国試頻出ポイント
産褥期の合併症は頻出テーマです。発熱をきたす産褥期合併症(子宮内膜炎、乳腺炎、尿路感染、創部感染など)の鑑別が特に重要です。症状と所見を結びつけて、どの合併症を最も強く疑うかを問う問題が多く出題されます。
国試出題パターンの変化に注意!
単に症状を選ばせる問題から、「この所見に基づき、看護師が最初に行うべきアセスメントは何か」や、「患者への説明として適切なものはどれか」といった、看護実践に結びついた応用問題への出題傾向があります。例えば、「悪臭のある悪露」を見た看護師が、次に「子宮底の高さと硬さ」を確認する(子宮復古不全の有無をみる)など、一歩進んだ看護判断が問われる可能性があります。