看護学のコア解説
この問題は、
産褥期 (Puerperium)の合併症である
子宮内膜炎 (Endometritis)の最も特徴的なアセスメント所見を問うています。産褥期の感染は、分娩時のリスクファクター(長時間分娩、破水時間の延長、内診回数の多さなど)により発生リスクが高まります。
重要概念の分析 (Key Concept)
子宮内膜炎 (Endometritis)は、分娩により子宮内膜が損傷を受け、細菌が侵入・増殖することで起こる感染症です。問題文の「長時間分娩(18時間)」「分娩中の複数回の内診」「分娩12時間前の前期破水」は、すべて
上行性感染 (Ascending infection)のリスクを高める重要な因子です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 子宮内膜炎の最も特徴的な臨床所見は、
子宮の圧痛 (Uterine tenderness)と
悪臭を伴う悪露 (Foul-smelling lochia)です。これは、感染による炎症反応と細菌の増殖によって産生される膿性分泌物が悪露に混ざるためです。したがって、選択肢③が最も直接的で特異的な所見となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 乳房の圧痛と緊満は、
乳汁うっ滞 (Milk stasis)や
乳腺炎 (Mastitis)の初期症状であり、子宮内膜炎とは直接関係ありません。
② 悪露ルブラに小さな凝血塊が混じることは、産褥早期(〜3日目頃)では比較的よく見られる正常な経過の一部です。大量の凝血塊や持続的な出血は異常所見ですが、この選択肢だけでは感染を示唆するものではありません。
④ 授乳時の軽度の痙攣痛は、
後陣痛 (Afterpains)によるもので、オキシトシン分泌に伴う正常な子宮収縮です。これはむしろ、子宮復古が順調であることを示す所見です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
産褥期の感染は、子宮内膜炎にとどまらず、
骨盤内炎症性疾患 (Pelvic Inflammatory Disease, PID)や
敗血症 (Sepsis)に進展するリスクがあります。発熱、悪寒戦慄、全身倦怠感などの全身症状も重要なアセスメント項目です。
概念のまとめ
子宮内膜炎:産褥期の子宮内膜の細菌感染。リスク因子は長時間分娩、前期破水、内診回数多、帝王切開。主症状は発熱、子宮圧痛、悪臭のある悪露。
一目で比較!
| 所見 | 正常な産褥経過 | 子宮内膜炎(異常所見) |
|---|
| 悪露 | ルブラ→セラル→アルバと変化。多少の凝血塊は可。 | 悪臭を伴う。膿性。 |
| 子宮 | 収縮良好。後陣痛あり。 | 圧痛あり。収縮不良のことも。 |
| 全身症状 | 微熱(産褥熱)は分娩後24時間以内に解消。 | 38℃以上の発熱、悪寒、全身倦怠感。 |
解剖生理と薬理のポイント
分娩後、胎盤剥離面は大きな創傷となります。子宮頸管は開大しており、腟内の細菌(連鎖球菌、大腸菌、嫌気性菌など)が上行感染を起こしやすくなっています。治療は原因菌をカバーする
抗菌薬 (Antibiotics)の投与が基本です。子宮収縮を促す
子宮収縮薬 (Uterotonic agents)(オキシトシンなど)を併用し、子宮内の膿性分泌物の排出を促すこともあります。
暗記のコツとゴロ合わせ
子宮内膜炎の3大症状は「
熱・痛・臭」で覚えましょう!
・
熱:発熱 (Fever)
・
痛:子宮圧痛 (Tenderness)
・
臭:悪臭のある悪露 (Foul smell)
リスク因子は「
長い・早い・多い」分娩:
長い時間分娩、
早い(前期)破水、
多い内診回数。
国試頻出ポイント
産褥期の合併症(子宮内膜炎、乳腺炎、産褥出血、血栓症)は頻出です。特に「正常な産褥経過」と「異常所見(合併症)」を対比させて出題されるパターンが非常に多いです。悪露の色・量・臭い、子宮底の高さと硬さ、体温の変化は必ず押さえましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
「最も疑われる疾患は?」という症状からの鑑別問題だけでなく、「この患者への優先度の高い看護ケアは?」「感染予防のために指導すべき内容は?」といった看護実践への応用問題も出題されます。例えば、子宮内膜炎が疑われる患者に対しては、まず医師に報告し抗菌薬投与の準備をするとともに、
Fowler体位(半座位)をとらせて子宮内の分泌物の排出を促すケアが重要です。