看護学のコア解説
この問題は、
術後患者 (Postoperative patient)における
低容量性ショック (Hypovolemic shock)の早期発見と、それに対する
優先度の高い看護介入 (Priority nursing intervention)を問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)
術後24時間は、出血や体液喪失による
循環血液量減少 (Hypovolemia)が生じやすい危険な時期です。提示されたデータは、ショックの前段階である
代償期 (Compensatory stage)の典型的な徴候です。心拍数増加(
102 bpm)と血圧低下(
110/65 mmHg)は、循環血液量が減少したことを体が代償しようとしている状態です。さらに、
乏尿 (Oliguria)(
20 mL/hr)は、腎臓への血流が維持できていないことを示す重要なサインです。患者の「弱さとめまい」は、脳への血流低下を反映しています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 選択肢1が正解です。なぜなら、この患者の状態は単なる「経過観察」のレベルを超えており、
緊急医療介入 (Urgent medical intervention)が必要な状態を示しているからです。看護師の優先行動は、
医師への迅速な報告 (Immediate notification to the healthcare provider)と、指示に基づく
輸液蘇生 (Fluid resuscitation)の準備です。これにより、ショックが不可逆的な段階に進行するのを防ぎます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ② バイタルサインの頻回モニタリングは重要ですが、これは「観察」であり「治療」ではありません。現在の状態では、観察だけでは病状の進行を止められません。まずは報告と治療の開始が最優先です。
混同注意! ③ 経口摂取と離床の促進は、安定した術後患者のケアです。低容量性ショックが疑われる患者に経口摂取を促すことは、誤嚥のリスクがあり、また必要な輸液量を補えません。離床はさらに血圧を低下させる可能性があります。
混同注意! ④ 鎮痛薬の投与は、患者の不安や不快感を和らげるケアのように見えますが、根本原因は疼痛ではなく循環血液量の減少です。鎮痛薬(特にオピオイド)は血圧をさらに低下させる可能性があり、状態を悪化させる危険な選択です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ショックの進行段階は、代償期→進行期→不可逆期です。この患者は「代償期」にあり、迅速な対応で回復可能です。看護師は、
ショックインデックス (Shock Index)(心拍数/収縮期血圧)を計算するなど、客観的データに基づいてアセスメントすることが重要です。この患者の場合、102/110 ≒ 0.93(正常は0.5-0.7)と上昇しており、ショックのリスクが高いことを示唆しています。
概念のまとめ
術後患者の低容量性ショック:頻脈、低血圧、乏尿、意識状態の変化(不穏、めまい)が主要徴候。看護師の優先行動は、医師への即時報告と輸液蘇生の準備。
一目で比較!
| 観察項目 | 低容量性ショック(代償期) | 安定した術後患者 |
|---|
| 心拍数 | 増加 (例: >100 bpm) | 正常または軽度増加 |
| 血圧 | 低下傾向 | 安定 |
| 尿量 | 乏尿 (< 30 mL/hr) | 適切 (> 30 mL/hr) |
| 皮膚所見 | 冷たく湿潤 (Cool, clammy) | 温かく乾燥 |
| 優先看護介入 | 医師報告 & 輸液準備 | 疼痛管理、離床促進、経口摂取開始 |
解剖生理と薬理のポイント
低容量性ショックでは、循環血液量の減少により静脈還流量が低下し、
心拍出量 (Cardiac output)が減少します。体はこれを代償するために、交感神経系を活性化させ、心拍数を増加させ、末梢血管を収縮させます(これが皮膚が冷たく湿潤する理由)。腎臓では、
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 (RAAS)が活性化され、水分とナトリウムの再吸収を促進しますが、それでも尿量が維持できないほど血流が低下している状態が「乏尿」です。
暗記のコツとゴロ合わせ
ショックの徴候を覚えるゴロ:「
ハラタツ」
ハ:頻脈 (Heart rate up)
ラ:冷感・冷汗 (Cool & Clammy)
タ:低血圧 (Low Blood Pressure)
ツ:低尿量 (Low Urine Output)
「腹が立つほど危険な状態」とイメージしましょう。
国試頻出ポイント
術後合併症としての「出血・ショック」は超頻出テーマです。バイタルサインの変化(特に心拍数と尿量)と、それに基づく「最優先の看護行動」をセットで問われることが非常に多いです。「観察する」「報告する」「準備する」のうち、生命危機が迫っている場合は「報告&準備」が最優先となります。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ低容量性ショックでも、
1. 症状を列挙して「どの病態か?」と問うパターン(基本)。
2. 症状を示して「看護師の最初の行動は?」と問うパターン(本問)。
3. 輸液蘇生開始後、「看護師が次にモニタリングすべき最も重要な指標は?」と問うパターン(応用:答えは「尿量」が頻出)。
と、段階的に理解が試されます。