概念 1. チェーン・ストークス呼吸
チェーン・ストークス呼吸は、呼吸がだんだん深くなった後、だんだん浅くなり、無呼吸をはさんで再び呼吸が始まる周期的な呼吸です。
終末期では、呼吸中枢の反応が変化し、このような呼吸パターンがみられることがあります。
国試の出題ポイント
家族は、無呼吸の時間を見て「苦しいのではないか」と強い不安を感じることがあります。
このとき看護師は、患者の意識レベルや表情、苦痛の有無を観察しながら、家族に対して、終末期にみられる自然な呼吸変化であることを説明します。
家族への説明例
「呼吸の間隔があくことがありますが、終末期にみられる自然な変化です。ご本人の表情や体の様子を見ながら、苦痛がないようにケアしていきます。」
看取りの時期には、チェーン・ストークス呼吸や死前喘鳴などの変化がみられることがあり、家族には予測される変化をあらかじめ説明することが重要です。日本医師会の緩和ケアガイドブックでも、終末期せん妄や死前喘鳴は家族にとってつらく感じられる症状であり、適切な説明が重要とされています。
覚え方
チェーン・ストークス呼吸
→ 深い呼吸と浅い呼吸、無呼吸を周期的に繰り返す。
概念 2. 死前喘鳴と苦痛を増やさないケア
死前喘鳴とは、嚥下機能が低下し、唾液や分泌物が咽頭や気道周囲にたまることで、呼吸時にゴロゴロと音が聞こえる状態です。
家族には大きな苦痛として聞こえることがありますが、患者本人は意識レベルが低下しており、苦痛を感じていないことも多いと説明されます。
国試の出題ポイント
死前喘鳴に対して、頻回に強い吸引を行うことは、患者の苦痛や粘膜損傷につながる可能性があります。
そのため、まずは苦痛を増やさないケアを考えます。
ケアの例
-
側臥位にする
-
頭部を少し挙上する
-
口腔ケアを行う
-
必要に応じて分泌物を抑える薬剤を検討する
-
吸引は必要性を慎重に判断する
死前喘鳴は終末期にみられ、本人は意識が低下していることが多い一方、家族にとってつらく感じられる症状として説明されています。
覚え方
死前喘鳴
→ ゴロゴロ音。
→ まず体位調整・口腔ケア。
→ 吸引は苦痛に注意。
概念 3. 意識が低下しても声をかける
終末期では、意識レベルが低下し、呼びかけへの反応が弱くなることがあります。
しかし、反応がないからといって、患者に何も伝えずにケアを行うのは適切ではありません。
国試の出題ポイント
意識が低下していても、患者の尊厳を守る関わりが大切です。
ケアの前には、
「これから体を拭きますね」
「少し向きを変えますね」
と声をかけてから触れます。
また、家族にも、穏やかに声をかけたり、手を握ったりすることを勧めます。
家族への説明例
「反応は少なくなっていますが、声をかけたり、そばにいたりすることは大切な関わりです。いつものように話しかけてあげてください。」
覚え方
反応がなくても、声かけ・説明・尊厳を守るケアを続ける。
概念 4. 終末期せん妄と家族への説明
終末期せん妄は、終末期にみられる意識や認知の変化です。
臓器不全、低酸素、薬剤、感染、脱水、代謝異常など、さまざまな要因が関係します。
症状の例
-
つじつまの合わない発言
-
不穏
-
幻覚
-
点滴を抜こうとする
-
昼夜逆転
-
意識の変動
国試の出題ポイント
終末期せん妄では、身体拘束をすぐに選ぶのではなく、まず安全確保と原因・苦痛の評価を行います。
看護のポイント
-
転倒・転落を予防する
-
環境を整える
-
苦痛や不快感を確認する
-
家族に病態を説明する
-
医師と相談し、薬剤調整や鎮静の必要性を検討する
家族は「本人の性格が変わってしまった」と強いショックを受けることがあります。
そのため、看護師は「病気の進行や体の変化による一時的な混乱であり、本人の性格や家族への思いが変わったわけではない」と説明します。
終末期せん妄は家族に大きな精神的苦痛を与えることがあり、適切な説明と支援が重要です。また、治療抵抗性の苦痛に対する鎮静は、患者ごとに慎重に検討される医療的判断です。
覚え方
終末期せん妄
→ 本人の性格ではない。
→ 病態として家族に説明する。
→ 安全と苦痛緩和を優先する。
概念 5. グリーフケアは亡くなる前から始まる
グリーフケアとは、大切な人を失う悲しみに対する支援です。
これは死後だけでなく、亡くなる前から始まります。
終末期では、家族は「何もしてあげられない」「もっと何かできたのではないか」という思いを抱きやすくなります。
国試の出題ポイント
家族が患者のケアに参加できるように支援することは、予期悲嘆へのケアになります。
ケア参加の例
-
口元を湿らせる
-
手を握る
-
手足をさする
-
好きな音楽を流す
-
声をかける
-
清拭や口腔ケアの一部に参加する
家族への声かけ例
「一緒に口元を湿らせてみませんか。」
「手を握って、声をかけてあげてもいいですよ。」
「そばにいることも、大切なケアです。」
人生の最終段階における医療・ケアでは、本人の意思を尊重し、家族等と医療・ケアチームが繰り返し話し合うことが重視されています。家族への相談・支援も看取りの過程で重要です。
覚え方
グリーフケア
→ 死後だけではない。
→ 亡くなる前から家族を支える。
まとめ
終末期看護では、次の5つを押さえます。
チェーン・ストークス呼吸
深い呼吸、浅い呼吸、無呼吸を周期的に繰り返す。家族への説明が重要。
死前喘鳴
ゴロゴロ音。頻回吸引より、体位調整・口腔ケア・苦痛を増やさないケア。
声かけ
反応がなくても、声をかけ、尊厳を守ってケアする。
終末期せん妄
本人の性格変化ではなく、病態として家族に説明する。安全確保と苦痛緩和を行う。
グリーフケア
亡くなる前から始まる。家族ができるケアを一緒に考える。